01:22

 山だろうか。それにしては、人工的だ。つやつやと白い光を跳ね返すその造形物は、遥か遠くの平原から、僕達を見下ろすように巨大な幾何学形を持ち上げていた。そして同じような白い構造が、奇妙な山と僕達の間にも横たわっている。その中心に、底の見えない穴がぽっかりと口を開けている。

「あれは、どう見ても……」

 僕は言いようのない疲労感に襲われながらも、無理矢理自分を奮い立たせ、骸骨に尋ねた。

「呪文はどこです」

「グあのぷ穴ィの先ン、奇ぞ怪にねぬじれたパ管状迷ヲ宮のま奥底にソ、太ッ古のズ勇者リゅ様が呪ゥ文を刻みル付んけた石碑モが眠ゾってろいますュ」

「初めからその石碑の所に飛ばしてくださいよ」

「ガそムれは無の理ですァ。墳ン墓にはプ強力みな結ぴ界が張ザられェてンいて、勇ぬ者様ぎしかタ入るュことがへできマまませヌん」

「それなら僕だけ飛ばしてください!」

「私ゴは、ッ触れめた者ズと、パ一緒ョに、転ぬ移するンことしがか、グできィないんマですォ!」

 骸骨はむせぶように、途切れ途切れに言った。

「役立たず!」

「ごゴめッんなぱさいェ……」

 心なしか二つの眼窩が細くなったように見えるのは、頭蓋骨が俯いたせいだろうか。僕だけワープしたら、帰ってくることができないじゃないか。自分の浅はかさと、それに気付きもせず大きな声を出した後悔とが重なり、いたたまれない気持ちになる。

「あと何分ですか」

「……ミ五十を八ン秒でギす」

「すぐ戻してください」

「ぷえェ?」

「さっきの汚い塊の所に、早く」

 僕は言い終わる前に再び棘をつかんだ。慣れたものだ。人間、どんな環境にも、いずれは適応するのだろう。などと考えている内に、僕はまた光に包まれた。

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