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「確認します。まずあの核を覆っているどろどろの物質を魔法の呪文で吹き飛ばして、そのあと核を破壊する……、でしたよね。核の破壊方法は?」

「ダ硬いンぐ物ではァありずませメんかラら、素モ手でじゅルうぶんヂかとぅ」

「その後は?」

「核ぶを壊ゲせば、ツ吐瀉へ物質ュがい粘度くを保てメず崩ン壊しジゃますりので、ポ露出しぬッた門をぐ消も去しまマまォす」

「門を消す方法は?」

「び開くまァではズただのに描かワれたゥ線にン過ぎまマせんぶのでギ、擦ルればッ消ぬえるポはずでィしす」

 つまり、素手で核を破壊して、素手で門を擦って消すというわけか。本当にそんな雑な方法が正しいのか。……いや、相手は汚物の集団だ。泥臭いやり方が正解なのかもしれない。

「もし、門が開いたらどうなります」

「オ記録むにョよればテ、数ん時間ゲで地メ表にュ汚物ヅが溢よれマまマす。そぶれとァ同の時にゅ、下々ボの軍ぐ勢がぁ大挙ンしまマすャ。我々レは皆べ、じ死に絶ぅえグまます。とケ言っつてもバ、ズ一番め近ィくにいパる私とヲ勇ん者様がぅ、まジず初めロに汚辱ェにんまみブれた死デを迎ぁえるラでしょじィう」

「あと何秒ですか」

「ガ二ん十八し秒でュすマ」

「吐瀉物質の内部、あの核の真横に飛ばしてください」

「……ォ正気ヌでぐュすか?」

「魔法で吹き飛ばせない以上、それしかない」

「私ゅは?」

「手を繋いで、最後のピクニックです」

「……無ん理ぺですュ」

「汚辱にまみれて死ぬのと、吐瀉物にまみれて生きるのは?」

 骸骨が、こちらを見つめている。瞳は虚無に等しいが、きっと、泣いているんだろう。僕だって、同じ気持ちだ。

「さあ、行きましょう」


 棘をつかむ。上手くいかなければ、この棘をつかむのも、これが最後になる。そう思うと、たった数分の付き合いなのに、このいがぐりのような同伴者が、妙に愛おしく思える。性別はわからないが、と言うより男女の区別があるのかさえ怪しいが、頭蓋骨に肉付けしていけば、きっと可愛らしい女性なんじゃないかと、根拠もなく、そんな気がする。だとしたら、あられもない姿の僕は、彼女の目に、どう映っているのだろうか。


 光が僕達を包む。

 その真っ黒な目は、じっと、僕を見つめていた。

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