ザマァするのは気持ちいいゾ!だけどかっこ悪いw
【評決】疾き事松風の如し
【相討】ザマァどころではない悲惨さ
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オンラインゲームの闇
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1559年5月8日夕刻
上野国那和城北壁上
大胡楓
(だんだん怖くなってくる?お母様)
風が止みました。
先ほどまで北西から吹いていたそよ風で揺れていた街道沿いの松の木が揺れなくなったのが見えます。
松風の気持ち、いかばかりでしょう。
怖いでしょうに。
泣きたいのでしょう?
いえ、泣きたいのを通り越しているのかしら。
あなたの父上は「こんな時は笑っちゃお~」という方です。
そこが似ていてくれればよいのですが。
「楓様。カロネード砲9門と鉄砲2000丁。
北側の敵に対しいつでも攻撃可能です」
「ご苦労様です。
引き続きよろしくお願いいたします」
守備隊長がぎこちなく報告してきました。
この人は元正規兵の中隊長になったばかりの方。
いきなりの後備大隊指揮官への着任で戸惑っているのでしょう。
ここはわたくしが頑張らねば。
「殿からの連絡はまだでしょうか?」
「は。半刻前のものが最新の情報です」
半刻前、松風の、いえ大胡の運命が決まったと報告がありました。
以前から政賢様が言っていたことが冗談ではなかったことが分かりました。
この大胡を「民主主義国家のひな型にする」という事。
皆の入れ札にて大方針を決定する。
何を夢物語を?
と思っておりましたが政賢様にはその様な言葉は通用しないのを忘れておりました。皆の思いつかないことを為されて大胡をここまでにしたことを。
ですから良い悪いは別。
政賢様の思った通りにこの大胡は「民主主義国家」として進んでいくのでしょう。
ですが。
今でなくともいいでしょう!?
その入れ札。
松風の命と大胡を計りにかける等!
その結果が半刻前、届きました。
「もしもの時は松風を見殺しにせよ」
と。
そう入れ札「選挙」でほぼ全部の村で評決が出されたそうです。
これを聞いた政賢様は泣きながら
「これは大胡にとって、いや日ノ本にとっての偉大な一歩だ。理性が感情に勝った」
と漏らされたそうです。
わたくしには到底受け入れられない仕置。しかし、それだからこそ、わたくしはわたくしのできることをするまで。
あの冥途坂の切れる当たり。
すぐ北側に布陣する赤井勢を脅して松風を生かしておく。
殿の帰還を待って何が何でも松風を奪い返す。
「螺旋銃の準備はいいですね」
わたくしが立つ胸壁上の左右に配置されている弾込め兵に確認する。
単純に計算して4丁だと1分間で4発撃てます。
赤井推政を狙撃するか、手を下そうとする足軽を打ち倒して松風の殺害を妨害する。
わたくしは伝声喇叭を使わず、大声で敵陣へ見栄を切りました。
「赤井の者、いえ、宇都宮のものですか、貴方たちは! それとも反逆者? 無法者? 野盗でしょうか?
幼き童を人質にしないと何もできないようですね!
もし松風に何かあればわたくし大胡楓があなた方を殲滅いたします。まずは従弟殿、いえ反逆者赤井! 貴方から血祭です。
男ならそこに立っていなさい。必ず仕留めて上げます」
わたくしは敵から見えるように鉄砲を掲げました。
冷やかして馬鹿にするものが多いですね。
そんな遠くから当たる筈がないと。
ここから2町100間(200m)はあります。
普通の鉄砲では全く当たらずにあらぬ方向に飛んでいくでしょう。
しかしこの銃、冬木様が丹精込めて試作に試作を重ねたこの世でたった4丁の試作品。
まだここまでが限界と仰っていた鉄砲。
これであの一番大げさに囃し立てている徒武者を狙って松風1号改を発射しました。
大きな衝撃は肩で吸収。
革帯を土塁上の手すりで固定した銃身は、中に掘られた螺旋状の刻みにより椎の実状に成型された弾丸に回転をつけながら発射させました。
顔に吹きかかる火の粉や白煙には目もくれず、次の銃を手にします。見れば先程の敵は胸を撃ち抜かれて倒れたところです。
廻りの者は倒れたその躯を目で追い、その後こちらを見た眼は驚きだけではない光を宿していました。中には後ずさるものもいます。
「もっと後ろへ行きなさい! 松風には近づけさせませぬ! 母の怒りを身に染みて知るが良い!」
2射目で2人目が倒れました。
この銃はまだそれほど試射はしていません。ですが普通の腕の者でも1町50間(100m)で20発中14発が5寸の円内に着弾したそうです。
偶々なのか全く見当がつかないと言われましたが、今の様子だと2町100間でも人を狙撃することは可能なのかもしれません。
「わかった!
まだ手は出さん!
日没まで待つ。
それまでに開城するか話し合え!」
赤井の声が聞こえます。
政賢様が御帰還するまでの時間稼ぎ。先の連絡では既に武田は降伏し大胡軍はこちらへ向かっていると。政賢様も馬を飛ばして親衛隊に守られながら戻っている最中だと。
「皆さま。よいですか。殿の命令は絶対です。何があっても開城は致しませぬ。ですが可能な限りあの磔台には敵を近づかせない事。
いいですね」
周りの銃兵だけでなく女房衆も大きくかぶりを振る。
その時、西の物見の兵が大声で朗報を伝えてくれました。
「西の街道を騎馬隊到着。親衛隊です。その数100。殿の馬印確認。殿のご帰還です!」
お待ちしておりました、政賢様。
わたくしたちはどうすれば宜しいのでしょう?
いつもの様に道をお示しくださいませ。
◇ ◇ ◇ ◇
北胸壁上
長野政影
殿と楓様が抱き合っていらっしゃる。
西の妙義山と浅間山の間に日が沈む。
その上野の大地を背景に、なんと見栄えのするお二人なのであろうか。
しかしその胸の内は悲しみに引き裂かれているのであろう。
「かえでちゃん。
これが大胡の行く末なんだ。大胡は大名が支配するものじゃない。これをわかってもらえるようにするにはこれしかない。
だけどね。
無下に松風を殺させはしない。見てよ。頼りになる家臣、ではなく大胡軍の者、僕たちに命を預けた者たちが行軍してくる姿を」
殿はそう言いながら楓様の肩を抱きつつ南を指さした。
そこには400人は居ようか。鉄砲を担いで速足で駆けてくる兵士が。
遠目で見る限りでは是政殿の部隊か?
それならば10倍の敵にも匹敵する戦力がある。
見る見るうちに縦隊が横隊に展開、銃列を敷く。
驚いて固まっている敵に向かっていつもの殿の大声よりも、遥かに大きな声が敵に向かって飛んでいく。
「赤井殿! 大胡は昼の内に武田を殲滅した。その足で既に12里の道を踏破し、先鋒がここまで到達した!
貴様よりも速いぞ!
大胡は疾く!
強く!
そして賢い!
決して敵には負けない。ましてや良いように降伏するなど、だんっじてしない!
先程近在の大胡の皆の総意をしっかと確かめた!
大胡は松風よりも大胡の幸せを選ぶ!
しかしっ!
松風に指一本でも触れてみよ!
このように貴様がどこへ逃げようと追って追って息の根を止めてやる。
配下の者もだ!
先程、此度の内応を差配した内務の公安局長。
弾左衛門を極刑に処した!
貴様らの味方はもういない。もう二度と貴様らが集うときはない。あるとすれば地獄の血の池の中であろう!
そこまで送り届けてやる。
安心せい!
これより殲滅戦を行う!
命が惜しければ逃げよ!
ここに残って降伏せずに戦ったものは、生き残ったとしても極刑だ!
以上!
何か文句あるか!?」
殿が言い終わると、是政隊が北上を開始する。
それを見た赤井勢が震え上がったのを見て取れた。
「何を恐れている! 敵はたった500以下。こちらは3500いるのだ。数で圧倒できる。鉄砲隊前へ! こちらも同数の鉄砲があるのだ!そして、大胡政賢! お前の首を取るのが我らの宿願。ここにいる者はお前に族滅させられた者達だ!
そう簡単に降伏するはずが……」
敵の大将の声が途切れた。
その視線の先には暮れ行く南の空に翻る白地に桔梗紋の幟。
言わずとも皆が明智勢2000以上の到着を知る。
先手が是政隊に接近し墳進式の照明用の火矢を赤井勢に撃ちかける。
その灯りの下、照らし出された敵に向かい狙撃が始まる。
それを確認した後、殿は楓様に頷きこう仰られた。
「かえでちゃん。彗星を撃ち落としてあげて。もう生きているのが苦しそう、みんな」
楓様は頷き返してから銃を構えた。
ばば~~~~ん!!!!
そして白い装束の敵方大将は白装束を赤く染めて前のめりに倒れた。
「最後まで前を向いて生きたんだね」と、殿が楓様に仰った。
もう松風様を振り返る敵は居ない。
蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
どうやら血盟を誓ったものはごく少数の指揮官だったらしい。
あとは雑兵を訓練しての快速部隊だったか。
その快速も、大胡の大返し部隊を見ることで士気を削がれた。
自分たちがこれだけは負けないと思っていた快速を上回る敵を前に自信を失ったのだ。
大胡が上手であると認識させた殿の勝利だ。
「かえでちゃん。
松風の心の傷。これと引き換えの勝利だよ。
自分が大胡に、僕に見捨てられたと一生それを引きずるんだろうね。
悲しいなぁ……」
暗闇の中、篝火に照らされて松風様が助けられ磔台から降ろされている光景を見て、殿が悲痛な声を漏らした。
「何を仰います、政賢様。人生はいろいろ、人それぞれの幸せがあると何時も仰られているではありませんか。松風の人生はこれから。これからその松風だけの幸せを見つける旅が始まるのです。
大名などという重たい荷物を背負わなくともよくなったのですから喜ばしい事。
確とその行方を見守りましょう。きっとなにもかもよくなります」
殿の俯いて垂れていた頭を両手に抱えて楓様が諭すようにおっしゃっている。
「後継ぎは必要ならば3人で作ります。
大丈夫。きっとうまくいきますわ。」
お市様が照れながら相槌を打ち、下を向いたままの春様からも
「大丈夫。大丈夫。大丈夫だから」と、大丈夫そうでない独り言が聞こえる。
それを聞きながら殿は
「そ、それはまだ早いなぁ。でもありがと~」
とお返事なさる。
これからも大胡はきっと強く明るく前進していくのであろう。
それが血にまみれた道であったとしても。
皆が安心して幸せに暮らせるような国を作るために力を合わせる。
それが大胡。
すっかり暗くなった上野の野を渡る風がまた吹いて来た。
その風が松林から再びいつもの様に清々しい香りを届けて来た。
「今日は忙しかったなぁ。松風と一緒にお風呂に入って寝かし付けたら夜戦に突入?
1日に武田、赤井に引き続き3連戦になっちゃうぞ!
あは」
大人の会話にお市様とお春様はキョトンとした顔でいたが、直ぐに察したお市様が赤面してお春様に
「私共も何時かは参戦しないと」
と話しかけられていた。
某もまつの待っているであろう自室へ向かうことになろう。
未来には未来の人材が必要なのだ。それが連綿と続く歴史を紡ぎ出す。
さあ。明日は龍と対決だ。
明智殿をお迎えしての作戦会議は明朝になろう。
それまでの支度を差配し始めるとしよう。
🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸
「カロネード砲」
2町の距離から撃てば多分全然あらぬ方向へ飛んでいく。危険危険。
「椎の実状弾丸」
また技術力がアップしてしまった。
19世紀初頭ですねこれはもう。
まあナポレオン戦争レベルの技術水準を想定していますのでそんなに無理な設定ではないかと。
「公安の弾座衛門」
浅草弾左衛門(江戸期の穢多頭)から取ってきました。
この男の暗躍で今回の大規模な謀反の連鎖がおきました。
あの方針決定で出て来た「灰色の男」です。
フーシェ風にしたかったけど時間がなくて没。
「白装束」
いつの間にか着替えている。自分の死期を悟っていたかの如く。
「人それぞれの幸せ」
何度も出てきましたこの言葉。
何も大胡の後を継ぐことが幸せではないし、かえって苦痛かと。
だから最初からこうする予定でした、最初の設定から。
「夜戦に突入」
いいなぁ。
夜戦で創る人類の歴史。
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