北条氏康編
【未来】15XX年+1989年
15XX年
京の都
御簾越しでの無言の拝謁であった。
この国の元首? 教皇? 象徴であると通訳は言っていたが、挨拶を交わそうとするも「拝謁」という恥辱的な言葉にふさわしい外交となった。
当たり前だ。
ヨーロッパ最強と謳われるテルシオと無敵艦隊。
これを遥々地球の裏側まで率いて意気揚々と遠征するも、最後にして最大の目的地であるジパングの軍に壊滅的・屈辱的な敗退をしたのだ。
未開の地を神の恩寵を授けられる地とするために東洋へ派遣された今回の遠征。
上陸した、ヨーロッパから率いてきた神に祝福されている筈の正規軍と傭兵達8000。それに加えフィリピンで雇い、訓練をした現地軍。
更には合併成ったポルトガルの現地軍10000。
これを半数の12000で決戦を挑まれ、包囲殲滅一歩手前で為された降伏勧告。
同時に発生した海戦において無敵艦隊78隻すべて撃沈された。
それを聞き、降伏せざるを得なかった。
屈辱で噛み切った唇が裂けたまま、今でも傷が治らない。
いったいどうやったら、あの歩兵・騎兵・砲兵・工兵の組み合わせに勝てるのだ?
あのような戦術にどうやったら対抗できるのか?
全く手も足も出なかった。
このヨーロッパ最強と自他ともに認める、パルマ公ファルネーゼが手も足も出ぬとは!
敵の船は横帆と縦帆を見事に組み合わせ機動力に富み、こちらのカノン砲の射程圏外から強力なカルバリン砲を撃ちまくる。
稀に近づくことが出来ても、舷側には鉄板が張ってある!
あれでは要塞からの焼玉攻撃も通用しないかもしれない。
このまま全滅すれば折角手に入れたフィリピンやマカオも占領されかねない。
やむなく停戦条約を結び、今後の正式な交渉を行う事となった。
その相手。
この国の実質上の元首。
『太閤様』と呼ばれているらしいが、それは尊称であってなんの役職にもついていないという。
だがこの者が、ジパングをこのような強国に改革した張本人であると聞いた。
この地を幾千万の人の血で染めて統一を成し遂げたという。
どのような悪鬼なのか?
この地に住まう悪霊か?
これから私のいる、この部屋に入ってくる男の顔をしっかりと見て、そのことを子細洩らさず本国のフェリペ2世陛下にお伝えせねばなるまい。
もし本国に帰る機会があればだが……
衛兵が会談場所のこの部屋に、その主が入室する旨を高らかに宣言する。
それを逐一、通訳の修道士ウルダネータがスペイン語に翻訳する。
「これから太閤様が御成りになります。スペイン式の礼でよろしいとの事」
いよいよ対面か。
これから始まるジパングとの条約交渉。
東洋の事について全権を持たされている私がやらねばならん。
緊張で手が汗でぬれているのがわかる。
手のひらには爪が食い込む。
「太閤殿下が入室なされます」
その言葉と共に入ってきた小柄な男は手を高らかに上げ、満面の童顔でこう言った。
「へろ~。
おら。ぼんじゅ~る。
ぼんそわ~る。
ぼんじょるの。
すどら~すとびぃちぇ。
に~はお。あっさら~む。
や~さす。
ぼあたる~じぇ。
めるはば~。
しゃろ~む。
あんにょんはせよ。
じゃんぼ~」
そして最後にこう聞こえた。
「ようこそ。未開の地へ。
だいろくてんまおう、
民主主義国家『にっぽん』へ。
いらっしゃいませ~♪」
この小男。
これからのスペイン、
いやヨーロッパに仇名すサタンとなるであろう。
◇ ◇ ◇ ◇
嫁入新聞:
1989年12月8日デジタル版トップ記事
【大胡政賢の新資料発見。歴史学会に衝撃】
今年10月に相次いで関東地方に上陸した台風12・13・14号による土石流により、群馬県大胡市の国軍大学校敷地内に安置されていた政賢公像が破損しました。
修復のため調査を行っていた国立文化財調査財団は今日、立像の基部に大量の巻物を発見したと発表しました。
調査チームの永野秀則主任研究員によると、1535年から
この伝記の著者は政賢公の大叔父である
以前より調査を申請している研究者が多数いましたが、国軍は一度も許可を与えていませんでした。
戦国末期の混沌とした情勢を収束に導いて江戸時代の基礎を築いた、謎に満ちた大胡政賢の前半生を研究する上で、重要な鍵となることが期待されています。
張孔廟は神将ともいわれた
公の【国民国家の形成】という偉業を称え……
🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸
この作品の一番の売りは
【精巧?な地図を描いてから作戦を立案】して
作品を書いている事です。
そして作者が良く行く場所を書いている為、視界や角度、距離・季節にも拘っています。
北条編の主要合戦場は平地のため、「昔の河川流路」がわかりません。
故に非常に適当な地図しか作れません。
合戦場が山地などに移行する武田編では、等高線を使用した陰影図などを使い、「もっともらしいw」作戦を立てて楽しんでいきます。
例)
沼田城攻防戦の地図
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