恋人の話

「ねぇフィアちゃん。マキちゃんとちょっと仲良すぎない?」

先輩は頬杖をついて、溜め息のようにそう吐き出した。瞬きで返す。あまりに今更な気がする。

「前々から羨ましくはあったけど。ちょっと流石に、仲良すぎない?」

「ええと」

どう返したものか悩む。

先輩は日に日に人間の真似が上手くなっていく。本人がそうだと信じて演技しているから、最早真偽も定かではない。

「…冬期休暇の予定は?」

「年越しはマキちゃんトコで鍋パ、新年はルエイエ先生について祝賀会と挨拶回りからの温泉旅行」

「ほら~~!」

先輩は顔を埋めて嘆き出した。

「そりゃあ縛りたくないし自由なフィアちゃんが好きだけど、流石に俺の事放置し過ぎじゃない?」

確かに、こういう事を言い出すのは珍しい。誰だ先輩に嫉妬なんて教えたのは。

「…カルタ」

「 っ、」

名前で呼ぶと、怯んだ様に身を固めた。

「こうして『恋人』の枠にいるのは、カルタだけだけど?」

現に今同じベッドで寄り添って寝ている彼の頬に手を添える。

「実はグレッゲル祝祭も先輩の為に空けてある」

「………ホントフィアちゃんさぁ…ズルいよね」

「何度も、ちゃんと好きだって伝えてるでしょ」

うん、と先輩は私の首元に顔を埋め直した。

「…それはそれとして、マキちゃんとはやっぱ仲良すぎ。鍋パ俺も行く」

まあたぶん。マキちゃんは許してくれるだろう。



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グレッゲル祝祭は凡そクリスマスの事だと思って貰えればOK

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