#16甘味水を求めて
ジャバルさんの話によると”マテリアル”はこの世界ではとても貴重な鉱石なのだとか。
その希少価値故に魔術師や錬金術師、学者や権力者達が喉から手が出る程欲しがる代物だそうで、過去にはマテリアルを巡って戦争が起こった事もあるらしい…。
それを聞いてジャバルさんに見せたマテリアル4つで4000万の値が付くのも納得だ。
ちなみにジャバルさんがなぜ僕の居た世界で使用されている”円”を知っているのかというと、以前出会った転生者に教えてもらったそうだ。
「そんな貴重な物だとは全然知りませんでした…」
まさか洞窟採取したマテリアルがこうも貴重な鉱石だったとは…
今考えるとハンマーで容赦無くマテリアルを砕いた自分がとても恐ろしい…。
「今ではその希少価値が故いに”幻の鉱石”とも呼ばれたりしています。ですので外で所持している事やマテリアルの名を口に出すのは控える事をオススメします。」
ジャバルさんは真剣な表情だった。
これはきっと忠告なのだろう。マテリアルを巡って戦争が起きたぐらいだ…もし所持している事が誰かの耳に入れば最悪命を狙われ可能性だってあるかもしれない。
所持するのも必要最低限にしなければ…。
「これで甘味水が好きなだけ買えますねハルト様!!」
少し重くなってしまったその場の空気をマーガレット一言が明るくした。
どうやらマーガレットの頭の中は甘味水の事でいっぱいのようだ。
考え込んでしまう自分にとって彼女のそういった一面が救いだったりもする。
「そっ…そうだなマーガレット、甘味水買いに行こうか!」
「ほう、甘味水でございますか。それでしたら中央広場にある”ヴィヴィアン”という喫茶店がオススメでございます。」
「”ヴィヴィアン”?」
「はい。その店では甘味水が美味しい事で有名でございます。」
「ハルト様!!ハルト様!!早速ヴィヴィアンとやらに行きましょう!!!」
ジャバルさんに甘味水のお美味しい喫茶店を教えてもらった事で、マーガレットは更にヒートアップしたようだ。こうなってしまったら彼女を誰も止める事は出来ない。もし止めようとする誰かがいたとしたら…その時は回し蹴りの刑だろう。恐ろしい…。
「色々と良くしてもらった上にオススメの喫茶店まで教えて頂いてありがとうございます!」
「いえ、中央広場へはこの店を出て右に進んで行くとございます。もしお店に立ち寄った際には店の店主によろしくお伝え下さい。」
「分かりました!それではまた。」
僕とマーガレットはジャバルさんに礼を言うと店を後にして、
ジャバルさんから教えてもらった喫茶店”ヴィヴィアン”へと向かった。
この街に入った時はゆっくり街の風景を見る暇も無かったが、改めて見るとどこか中世のヨーロッパを連想させる雰囲気の街並みで、勝手なイメージだかこういった街の食事はとても美味しいイメージがある。この世界に来てまともな食事は一切していない。正直、甘味水よりもご飯を食べたいのが僕の本音だ。
「ハルト様〜楽しみですね〜」
「そうだね〜早くご飯食べたいね〜」
「ご飯!?」
「あっ」
やってしまった。
ご飯が食べれると思って気が緩んでしまい心の声が漏れてしまった。
でもこれは決して悪い事じゃ無い!体がご飯を欲しているのだ!自分に正直になっただけなのだ!!うん。決して…。そう思う…はず…だ。
「あっ、じゃ無いですよハルト様〜!甘味水の方が先です!!」
子供のように駄々をこねる美少女マーガレット。
なんだろう?駄々こねる姿も可愛いと思ってしまっている自分がいる。
いや実際可愛いのだからしょうがないのだ。これは何事にも変えられない事実なのだ!!
それにこんな姿を僕に見せてくれる事が何より嬉しい。そう思った。
「分かったからマーガレット、そんなに駄々を捏ねないで!」
「む〜」
そんなこんなで僕達は中央広場へと到着した。
到着して思った事は想像していたよりも中央広場は大きくて多くの人で溢れかえっており活気に満ちていた。元いた世界で例えるなら夏祭りみたいな雰囲気だ。
そして広場の中心には男性と女性の銅像が建てられていた。この銅像2人はこの世界で有名な人達なのだろうか?今度ジャバルさんにでも聞いてみよう。
そして何より食欲をそそる香りがこの辺り一面を覆っており、僕の食欲を更に掻き立てる。
もう我慢出来ない…限界だ!!
「マーガレット!!」
「ハルト様!!」
どうやら僕達2人が考えている事は同じらしい。
暗黙の頷きで互いの意思を確認し、ジャバルさんに教えてもらった喫茶店”ヴィヴィアン”を探し始める。
「行こう!!」
…
……
………
…………
俺に任せろと言わんばかりに勢いよく探し始めてみたのはいいものの、僕はここで重大な事に気付いてしまった…。
それは…
「文字が読めない事を忘れてた…」
そう。僕はこの世界の文字を読む事が出来ないのだ。
なぜかこの世界の人と会話する事は出来るのだが、文字の読み書きはまったく出来ない。
その事をすっかり忘れていた。
「あ〜恥ずかしい。俺に任せろ的な主人公発言めちゃくちゃ恥ずかし〜」
「ハッ、ハルト様!そんなに落ち込まないで下さい!!文字なら私が読む事が出来ますので!!!」
マーガレットの優しさに満ちたフォローが暖かくもあり、心にも刺さった。
今後の事も考えて今度時間がある時にでもマーガレットに読み書きを教えてもらうとしよう。
「うん、探すのはマーガレットに任せるよ。」
◇
それから2人で中央広場を散策しながら回り、
ジャバルさんに教えてもらったお店をようやく見つけることに成功した。
「ジャバルさんから教えて頂いたお店はたぶんこちらだと思います。」
「ここが…”ヴィヴィアン”!!」
ジャバルさんから教えてもらったオススメの喫茶店”ヴィヴィアン”その外観はどこか童話に出て来そうな不思議な作りをしており、店の周りには見た事の無い不思議な植物がたくさん置かれており、店内の中からはお客さんの活気に満ちた笑い声も聞こえて来る。どうやら人気のお店のようだ。
「じゃあ早速入ってみようか」
「はい!!」
僕達はジャバルさんから教えてもらったお店”ヴィヴィアン”へと入店したのだった。
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