#16 前編
とうとうこの日がやってきてしまった。
そう、今日は12月24日。クリスマスイブでもありそして愛理さんに告白すると約束した日でもある。
「~♪あ、樹さんおはようございます!」
「おはよう……」
ベッドから体を起こしてみると上機嫌なのか鼻歌を歌っている愛理さんの姿があった。
今日が学校だったらよかったのに、そしたら愛理さんと喋らなくて済んだのに……
ただ昨日が終業式だった今、凛ヶ丘高校は冬期休暇に入っている。
冬休みに……というか普通に初めて学校に行きたいと思った気がする。
「今日は事務所に行かないといけないので夕方まで帰ってこれないかもしれません」
「収録だっけか?まあ頑張ってこい」
頼むからできれば今日は帰ってこないでくれぇ……
まったくタイミングが良いのか悪いのか……
因みにsiveaの事務所はここでもなく凛ヶ丘でもなく隣県にある父さんの会社の近くでもない。
東京とかいう大都会だ。
「樹さんも来ればいいのに」
「愛理さんは俺に来てもらいたいか?」
「それは勿論来てもらいたいですよ」
俺が行くとなると告白のタイミングが分からなくなるな。
もし日帰りで帰ることができなかったら向こうで告白しないといけないし帰れたとしたらこの家でするのが妥当だろうな。
少し悩み俺が出した結果は、
「……少し待っててくれ。すぐに準備する」
「え!?付いて来てくれるんですか!やったー!」
入れたら事務所にも入ってみよう。
ちなみに俺も愛理さんもsiveaの人間も事務所事務所と言っているが会社兼事務所的なところもあり普通にIT企業でもあったりするが面倒なので皆事務所と呼んでいる。
その事務所だが今の俺は入れてもらえるか少し怪し所だがまあ入れなかったら入れなかったでその周辺を観光することにする。
事務所での思い出を軽く思い出しながらも俺は急ぎ仕度をしリビングで待つ愛理さんの元へ戻った。
「よし行くか」
「なぜスーツ姿?……まあいいです。社長に樹さんのこと話したら直接会って話がしたいと言っていましたよ」
「あ、スゥ―はぁ……もしかすると向こうで泊まりになるかもしれないが良いか?」
「んーいいですよ。でも告白は今日ですからね。絶対ですよ?ぜーったい今日です」
「はい……」
「泊まるかもしれないなら服の用意もしないといけませんね」
泊まるかもしれないので俺と愛理さんは大急ぎで用意をしてから家を出た。
駅へ向かいながら今日のことを考えた。
夕飯食う時に良いところにでも言って告白するか泊まった宿で告白するか……
まあそれ以外はあまり考えれられないのでそこら辺は臨機応変と行くことにした。
それでも念のため途中で銀行に寄りいつもは使わない中学の時に貯金したほうの口座から困らない程度には下ろしておいた。
何度も電車の乗り換えをし新幹線で移動したりと朝から中々体を動かすことになったが無事たどり着くことができた。
「いや~久しぶりですね~」
「俺もそうだな。久しぶりに来た」
「まあ中に入りましょうか。外は寒いですし」
俺たちは中へ入り愛理さんは自分の行くべきところへ行き俺は応接室へと案内された。
中も随分変わったな……
三年もあってそのうえVtuberを見ているものであればほとんどの人が知っているような大企業だ。変わっていないはずがない。
応接室の中を見渡していると扉が開いた。
「久しぶり」
「お久しぶりです。瀬戸社長」
「君が敬語を使うとこんなにも気持ち悪く感じるのか……」
「それはひどいな!?」
俺に初手で「敬語を使うと気持ち悪い」と言ったこの人がREVIA株式会社代表取締役社長兼sivea事務所代表、
三年ぶりにこうして会って話すことができたが何も変わっていないようで少し安心した。
「……約三年前契約を少し勝手に切ってしまったことを謝罪させてくれ」
俺はそう言って頭を下げた。
そう俺は約三年前仕事が山のようにあったのにそれを無視し契約を切ってしまった。
理由は中学生だったということもあり止められてしまったことが主だ。
「顔を上げてくれ。あれは君は悪くない」
「それでもこっちにも非はあるだろ」
「……まあ今更ああだこうだ言っても意味はないからこの話はお互いに非があったということでいいかな?」
「それでいいか……」
まったく、話を流す癖は相変わらずのようだ。
「この話は忘れて、ゆき君とはどうなんだい?もう済ませるところまで済ませたのかい?」
「siveaの人間はなんでいつもこうなんだよ!」
子は親に似ると言うものだがここでは子が社員で親が社長というわけか……
そんなことを言ってくる社長に頭を抱えながらも前半の質問のだけ答えることにした。
「まあまだ許嫁以上恋人未満だな」
「恋人ですらないのかい。でも『まだ』ということは近々告白でもするのかな?」
「ご名答。今日だよ」
「……今日?」
「ああ、今日だ」
あちゃーという顔で社長は再び口を開いた。
「大切な日にすまないね」
「まあ正直に言って愛理さんは振る気がないようだから別に言わなくてもいい気がすると思っている自分がいるくらいだから心配しなくていいと思うぞ」
「ああ、そうだそれなら……」
社長がスマホをポケットの中から取り出し何か文字を打つと通知音が鳴った。
何をしているんだ?
「よし!夜はここへ食べに行くといい。まあまあ高いところだが私が払うよ。あとで銀行のほうに代金の分振り込んでおくから気にしないでくれ。それとここなら告白するにはぴったりの場所じゃないかな?」
「この場所雰囲気的に告白というよりかはプロポーズだろ……」
「まあここへ行ってくれ。予約はオーナーが知り合いだから大丈夫。あとはコースを決めてくれないか」
「嘘だろおい」
社長はまあまあ高いと言ったが普通高校生というか社会人でもなかなかの給料の人間じゃないといけないところだぞここ。
普通だったら悩むところだが社長が払ってくれるということなので一番高いコースでも頼もう。
俺は社長に言って最高級の物にしておいた。
「ああ、そうそう。宿は君たちで決めてくれ。流石にラブホのオーナーは知り合いに居ないからね」
「んなとこ行くか!ちゃんとした所かビジネスホテルにでも泊まるからな」
「ふむ、じゃあどこか用意しておくよ」
「流石に社長に頼り切るのはな……」
「その代わりに今度事務所からの発表の時に手を貸してもらうからね」
「そういうことかよ……」
借りを作られたってわけか……
というか事務所からの発表に関係者でもない俺が出ていいものなのか?それに男だし。
sivea所属のVtuberは女性限定となっているのに男子である俺が出ていいのだろうかという疑問と不安がある。
「もし時間があるのならしばらくこっちへ居てもらいたいのだけれども、どうかな?」
「愛理さんとの相談のうえで決める」
「そうだよね。今から会ってきて決めてくれると助かるかな?本当にこっちのことは気にしなくていいからね。君とゆきくんの大事な日を潰してまでこうして居てもらっているんだ。流石にこれ以上無理させるわけにもいかないからね」
社長に愛理さんの居る場所を訊き俺は向かった。
本当は告白するなら自宅のほうが良かったが愛理さんも世話になっている社長の提案を即断るわけにもいかない。
「ここか?」
部屋の扉をノックすると微かな声が聞こえた後に扉が開いた。
「えっと……どちらさ―――」
「あ、樹さん!どうしたんですか?あ、その人中に入れてもらって構いませんよ」
丁度休憩してくれている愛理さんのおかげで部屋の中に入ることができた。
部屋の中に入ると数人の人とそれらしい機械ともう一つ奥に部屋が見えた。
こんな部屋が……
収録用の機材だろうか?
様々な機会が揃っているスタジオまでもがこの建物の中にあった。
「事務所の中にこういう部屋もあるんだな……」
「あとから作られたんですよ。会社も大きくなりましたからね」
「すまん、顔は覚えているんだが……」
「
「あ、影南さん……久しぶりだな」
「年上の人には敬語。学校で習わなかったんですか?」
叱ると同時に俺の耳を思いっきり掴んで引っ張られた。
この人も変わってないんだな。
ん?そういえば……
「まさか、愛理さんのマネージャーか?」
「はぁ……はい、雪姫雪花のマネージャーを務めています」
「えっと……影南先輩知り合いですか?」
「あーそうですね……喋ってもいいんですか?」
「社長に訊いてくれ」
「あ、はい。じゃあゆきの関係者とだけ言っておきます」
影南さんが俺の紹介を簡単に済ませてくれた。
「そう言えばどうしてこの部屋に?」
「あ、そうだ。少し愛理さんと二人で話したいんだが」
「五分です。休憩時間が残り六分なので五分以内に済ませていただければ問題ありません」
「と、いうことだ。愛理さんちょっと部屋を出てくれ」
「は~い」
軽い返事をした愛理さんと二人で部屋の外に出て俺は本題に入ることにした。
「で、どうしたんですか?」
「社長にしばらくこっちへ居てほしいと言われたんだが……」
「具体的な期間とかは言われてないですよね。うーんちょっと待っててくださいね」
そう言うと愛理さんは部屋へ戻っていった。
影南さんに予定でも訊いているのか?
すぐに愛理さんは影南さんを連れて外へ出てきた。
「明後日の予定はこのままでいいとして問題はこっちですかね。もともとそっちの県の施設でするように設定していたので」
「あ、そこはキャンセルしましょう。事務所でできると思うので。キャンセル料に関しては私個人が持ちます」
「分かりました。ここは事務所へ変更しておきます。あとこの配信のデータって……」
「この間こっちのPCにコピー入れてあるはずなので後で確認しておきます」
「もしなにか足りないものがあるようなら早めにお願いします」
「分かりました、これぐらいですかね」
「はい、それでも急に変えたことなので不備があるかもしれませんがその時はその時で何とかしておきましょう」
影南さんはタブレットを閉じるとまた中へ戻っていった。
マネージャーって便利なんだな。
もし万が一にもVtuberとして有名になるようなことがあったら俺もマネージャーを雇おうと決意した。
「お待たせしましたね樹さん。えっとこれでしばらくはこっちに居ても大丈夫なようにしておきました」
「じゃあしばらくこっちに居るってことで良いんだな」
「はい。……今日ですからね?」
「はい……」
何が何でも今日俺に告白させる気なんだな愛理さんは。
これだけ予定が変更したなら忘れるかまた今度と延期させられるかもしれないと少し期待していた俺が馬鹿だった。
項垂れながらも社長の居る応接室へ歩いて戻った。
「失礼しまーす。社長大丈夫だった」
「それは良かった。ホテルもどこか予約しておこう。帝〇ホテル?ホテル〇ークラ?」
社長は日本に住んでいる人は誰でも知っているであろうホテルの名前を出してきやがった。
ここの社長は阿保なのか?
ちゃんと経営もできているのか不安になってくる。
「そんな金のかかる所に高校生二人が泊まるってどういうことだよ!?無理だろ!?金もないぞ!」
「最悪君のお父さんと雪上家に請求すれば問題ないだろう?」
「それはそうかもしれないが……」
「で、どうするんだい?」
「近くの安いところに泊まる」
「あ、そう?支払いはこっちが持つから」
今から予約しておくべきだろう……
ただここら辺のホテルは全然知らないので誰かに任せよう。
「社長ここら辺で安くていいホテルとかってあるか?」
「探して予約しておくから心配しなくてもいいよ」
「ありがたい。俺、ここら辺の土地勘微妙にないからな……」
三年前この事務所に来ることはあったがここら辺に泊まったわけでも観光したわけでもないので必要最低限のコンビニの場所くらいしか知らない。
事務所に徹夜でいたことはあったが社長以外の全員に心配され最終的には無理矢理家へ帰されたことがあったなと思い出した。
久しぶりの再会でお互い会わなくなってからどうしていたか話をして盛り上がった。
「そういえば社長暇してるのか?」
こんなに長い時間を取っても仕事をしていない社長が本当に仕事をしているのかが気になった。
まさか仕事を誰かに投げやりなんてことは……
この社長だったら平然とやるな。
「勿論丸投げだけど?何か?」
「だよなぁ。因みに誰が……」
「
「あーあの人か」
「今はIT部門のトップでやってるよ。まあ副社長の立場だからついでにだけど」
この会社本当に大丈夫なのだろうか。
社長はダメでも周りが何とかしてるだけだろ……
まともに仕事をしているのか怪しい所だな。
「あそこも最近新しい仕事が来て大変そうにしてるから手伝ってきたら?」
「出してるの社長だろ。というかそんな状況で副社長に仕事丸投げかよ……で、どういうのをしているんだ?」
「これは今のところ公表していないからあまり喋らないでもらいたいんだけど今度君に公表してもらうからね。んで、その内容なんだけど」
社長が間を開けたところで生唾を飲み込んだ。
「うちの会社からゲームを出すことになったんだ」
「ゲーム?どういうのだ?」
「内容はまだ正確には決定していないんだけどMMORPGを作るつもりなんだ」
「それでプログラムができるエンジニアを全員引っ張り出して作業させているというわけか」
「そうそう。丁度彼らも暇していたからね」
「ご愁傷様だな……」
まさか少し楽にしていただけで仕事を持ち込まれるなんて、それもなかなかきつそうなものを。
それにまさかゲームを作らされるなんて思ってもいなかったことだろう。
この会社に残らなくてよかったと思った。
「まあもう話すこともないだろう?そっちを見に行ってやってくれ」
「そうだな。軽く見てくるとするか」
社長と別れ俺はその働いているであろうエンジニアの元へ向かいながら考えた。
Vtuber事務所の大元である会社からゲームを出すなんて前代未聞だ。
確かに大企業にもなり様々なことに手を出している。
ただそのどれもがVtuber事務所を創ったからこそできることであってVtuber関係なしにゲームを作るなんて……
というかまずゲームを作ろうとしている時点で相当頭がイっている気がする。
部屋の前に着くと横から声を掛けられた。
「ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけど……」
「あ、いやその……」
この人にピアスが何個も着いているせいで臆してしまった。
どう言えばいいんだ?
知り合いに会いに来ましたというわけにもいかないからな。
まずこの事務所の人間ですらないのにここにいる時点で問題だ。
「それに――――君ここの人間じゃないでしょ」
「あ、いやまあその確かにそう――――――」
「櫛野ー何やって……神崎!?なんでお前ここに居んだよ!」
「久しぶりだな白葉。社長にここへ行って来いって言われたから来たんだけど」
「と、いうことは?」
「見てから決める」
「パイセンこいつと知り合い?」
この
パイセン(先輩)と言っているということはそうなんだろう。
「酒飲み仲間」
「ちげぇよ!俺、未成年だろうが。俺は烏龍茶飲んでるだけだ」
「あと肉な……焼肉に行ったとき俺の財布泣いたんだけど」
「今更だろ」
「えっとパイセンの知り合いで飲み仲間ってこと?ん、でもなんでこんなところに」
「まあ中は入れや。あ、こいつ中に入れても大丈夫。俺が保証する」
部屋の中に入ると……まるで地獄のような空間だった。
全員PCの画面を見てブツブツと何か呟いている。
「櫻花ー!神崎居るぞー」
「え、まじぃ!?あ、ほんとじゃんカモーン」
「これで酒飲み仲間が集まったな」
「だから俺は未成年だっつうの」
「おらっ!おひさ~」
「久しぶりの再会で頭を殴ってくる奴いないからな!?」
変わってないな。
三年で変わる奴もいれば変わらない奴もいるな。
「早速ヘルプ。ちょっと来て」
俺は櫻花に付いて行き彼女のデスクに置かれているモニターを見た。
「武器購入の動作?」
「そうそう。例えば次の武器を見るときの切り替えなんだけどそこで武器を動作させないとなんだよね。例えばラ〇トセーバーとかみたいににょきってなるやつなんだけど。でもこの武器だけなんか詰まるんだよ」
「ちなみにこれを普通に購入した後キャラが使うと……というか武器モーション的には問題はないのか?」
「いやぁそれがねぇモーション班が少し遅れててこの武器まだ手を付けられてないんだよね。正直向こうの不手際なのかこっちの見逃しなのかわからない」
「……人手不足なのか?」
「このゲーム自体が一年後完成予定にしてるんだよね。んで急ピッチで進めてるせいで班ごとで微妙なずれができちゃってるんだよねえ」
「あはは……」と乾いた笑いをする櫻花を仕方がなく手伝った。
俺と櫻花は解決策を考え出し合い協力も得てようやく何とか動作させることができた。
時間が掛かったな。
今回はなかなか面倒なことになっていたということもあるだろうが四時間も使ってしまった。
「納期明後日だったからよかったぁ」
「あぶねえなおい」
「アハハハ、もうお昼だけどどうする?」
「別に腹減ってないからな」
「ほいじゃあこれでも食ったら」
そう言ってデスクから取って投げてきたのはカ〇リーメイトだった。
プレーン味か。久しぶりに食べるな。
カロリーメイトを食べること自体少なくなってしまったので久しぶりに食べた味を堪能した。
「櫻花パイセン終わったっすか?」
「あー何とかね。ほとんど神崎のおかげだけど」
「次これっす」
「……頑張れ櫻花」
「もう嫌だあぁあああああああああああああああ!」
櫻花は追加された仕事を見て大声で叫んだ。
俺にはもう応援することしかできない。
もう面倒なのでこの部屋から逃げ出そうとすると肩をがっちりと掴まれた。
「手伝ってよぉおおお~あんた副社長よりできんだからさ~」
「……できねぇよ」
「まあ座れって。……おーい白葉!こいつ座らせて」
「はーなーせー!」
無理矢理櫻花は俺を椅子に座らせてくる。
三年前を思い出すな……
仕事がだんだん溜まってきて暇にしていた俺に手伝いをさせようとした時のことを。
「神崎さん?先輩?何とかしてやってくれると助かるんだけど」
「年上にさん付けとか先輩って呼ばれたの初めて……普通に年下なので……」
「キモッ。え、きもいんだけど神崎ぶっ壊れた?」
「手伝わないぞ」
「私年上やぞ。さっさと手伝え」
強引すぎる……
何故か俺は櫻花の仕事の半分を押し付けられた。
「はー終わった」
「ちょっと!?私半分も終わってないんだけど」
「お前が遅いだけだろ」
「いや神崎が早いだけじゃね?多分この中というか社員の中で一番早い」
「は?そんなことないはずだけどな」
俺が居た頃は全員とまではいかないが大半の人がこのぐらいのペースで終わらせていった。
櫻花は昔より少し劣っているが大して変わってない。
「いや……昔と仕事量が違うだけだよ。そのぉ言うの悪いけど……昔は社長と副社長と神崎がやっていた仕事量の四分の一ぐらいしか私たちやってなかったから」
「ああ、だから俺含めたその三人は少し時間が掛かっていたのか」
「少しが三十分とかなの化け物なんだけど」
「じゃあ白葉は……」
そろそろ白葉が見えなくなるんじゃないかって程紙が積もっていた。
社長はサボってるし副社長はその社長の仕事をしているせいで大量に仕事があろうがこなす人がいないのが現状らしい。
「こんなことならVのほうの仕事に行っておけばよかった……」
「お前向こう行ってもやることないだろ」
「あー向こうは向こうで技術チームがあるから」
「でも、櫻花お前はこっちだからな」
「はい……ということでこれお願い」
「何がということでだ!まあこれぐらいなら造作もないな」
櫻花は何故か俺を恨めしそうな顔で見ながらも自分の仕事を淡々(?)と終わらせていった。
俺が終わってから一時間が経とうとした時ようやく櫻花が終わった。
「あー終わったー疲れたー」
「パイセン……これ……」
「あ?終わったもんは終わったんだよ!黙ってお前がやれや」
「うっす……」
残りの仕事をすべて後輩に押し付けるとかやばいやつだろ。
ストレスからなのかやっとの解放感が潰されそうになったからきたのか口調が荒くなっている。
俺と櫻花は話しながら白葉のところへ向かった。
「ウェーイ。終わった~?」
「チッ……これを見てもそれが言えるのかよ」
白葉は山積みになった紙を親指で指した。
まあ煽っている櫻花だがこいつは俺に手伝ってもらったからな。
「ああ、そうだ。今日この後飲むか?久しぶりの再会記念的な感じで」
白葉に飯を誘われてそんな時間か?と思いつつも時計を見てみると気が付けば時計の針は五時を過ぎていた。
折角の話だが今日は無理なので、
「あー……明日は?」
「勿論明日でもいいぞ。でもお前こっちに残るのか?」
「社長に残れって言われてな。それと今日は生憎先約がいるもんでな」
「え~だれだれ~?」
これ言ってもいいのか?
そう少し悩んだがまあいいだろうと口を開けた。
「雪姫雪花。まあゆきのことは知っているよな」
「ああ、じゃあ神崎が社長の言っていたゆきの許嫁ってわけ?」
「無駄なところで頭が回るなお前は」
「それほどでも~」
「「褒めてない」だろ」
白葉も俺も同じことを思っていたようだ。
あの頭の回転の速さを仕事に使えばいいものを……
「まあそういうことだ」
「ゆきと夜は金のかかるような場所行くから金がない私たちとは飲まないと。あいわかった!」
「馬鹿か。まあ色々とな」
「プロポーズ?」
「その一つ手前だ」
「金持ちの告白がプロポーズすぎる件について」
うちが金持ちなんじゃなくて愛理さんの家が金持ちなだけなんだよなあ。
それに今回は社長に全て請求が行くからな。
「じゃあ明日。支払いは白葉持ちね。決定」
「よし、決定。異論は認めない」
「お前ら……まあいいか」
「「よっしゃあああ」」
明日は白葉が持つことが決定したので俺も櫻花も盛大に喜んでやった。
やることもなくなったので「ゆきの元へ向かうことにした」と二人に言って愛理さんの元へ向かった。
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