#15

 家へ帰ると玄関に愛理さんともう一つ知らない靴が置かれていた。

 誰だ?雪上家の人か愛理さんの知り合いだろう。

 母さんが来るとは思えないからな……

 リビングへ入ると愛理さんと……

 見知った顔が一人居た。


「お邪魔して……おや?ふ~んゆきちゃんと君がねぇ」


「お久しぶりです。黒瀬さん……」


「二人とも知り合いなんですか?」


「あれ?知らないの?sivea創立メンバーに彼が入っていることを」


 そう俺とこの黒瀬さんこと黒瀬 玲奈くろせ れいなはsivea創立メンバーの人間だった。

 あの時は中学生だったこともあったりと色々とあって俺は抜けた。

 そしてこの人、黒瀬さんは一期生としてsiveaに所属するVtuberだ。


「え、確かに樹さんとsiveaに関わりがあるのは知っていますが創立メンバーのあの写真には……」


「写ってないだろうな。その時には俺は脱退していたからな」


「あの時はあんな社会の右左も分からなかったのがこんなになっちゃって」


「二年……いや三年ぶりぐらいか」


「私たち一期生が活動する前に抜けたからそのくらいになるね」


「え、じゃあ一期生の方とは全員知り合い?」


「マネージャーとも知り合いだよ。というかあの時社長に肩並べてたぐらいだし」


「それはない」


 確かに社長とは多少仲が良かったが肩を並べるほどではない。

 しかしこんな形で愛理さんに知られるとはな……

 別に隠していることでもないので気にしなくてもいい気がする。


「しっかしエロくなったねぇ」


「どういうことだよ!」


「顔は前からだけど体もいい具合に引き締まって背も伸びて声もいい具合に低くなり……ゆきちゃんは良いもの貰ったね」


「それは言えてますね。因みにそこに加えて草食系なのでギャップもあってこれまた良きなんですよ」


「エロいのに草食系……これは押せば押すだけヤバくなる……」


「一緒にお風呂入ったら顔真っ赤にして照れちゃって。あの時は本当にもう可愛くて可愛くて」


「うわぁそれはやばいわ」


 やめてくれ、こんなの生殺しだ。

 恥ずかしくてしょうがない。

 途中から耳に二人の会話が耳に入ってこなくなったので部屋から逃げた。


「二年もあったのに変わってないのかよ……」


 黒瀬さんは昔からあの調子だ。

 最初は普通に喋っているだけだと思ったらだんだん話の流れが偏り結果変になる。

 そしてその癖は配信でもよく出ていてコラボの時なんかは他の配信者さんを困らせるほどだ。


「樹君?何をしているのかな?」


「えっとその……」


「久しぶりに君の話で盛り上がっているというのに本人が居なきゃ面白くないよね?ゆきちゃん」


「そうですよ。樹さん戻ってきてください」


「というかなんで家に黒瀬さんがいるんだ」


「オフコラ」


「そういうことかい!俺は部屋に居るから二人で好き勝手してろ!」


 自分の部屋へ戻り椅子に座り椅子の背もたれを下げた。

 マジであいつら……

 もう黒瀬さんが帰るまで飯の時以外部屋から出ないからな。

 それにオフコラということは普通に二人で配信するだろうからどちらにせよ部屋から出ないほうがいいだろう。

 やることもないので目を瞑った。









 いつの間にか椅子の上で寝てしまっていたようで目を開けて周りを見てみると、


「黒瀬さん?何してるんですか?」


「エロ本探し」


「ないですよそんなもの」


「ゆきちゃんの部屋にあって樹君の部屋に無いわけないでしょ」


「え?……勝手に探しててくれ」


 俺は愛理さんに事実かどうか問い詰めるために黒瀬さんを部屋に居れたまま愛理さんの元へ向かった。


「よく寝てましたね」


「愛理さんって薄い本持ってるのか?」


「ありますよ。見ますか?」


「……?」


「ちょっと待っててくださいね」


 俺の思考回路が停止している間に愛理さんは黒瀬さんを連れて部屋から帰ってきてしまった。

 そして俺の手に薄い本を乗っけてきた。


「読みたかったら貸しますよ」


「いや読まないから返すよ」


「君本当に男か?」


 失礼な……

 俺は愛理さんの手に薄い本を返した。

 というか愛理さんのことだからF〇NZAとかネットで見てるものだとばかり思っていたがそうでもないようだ。

 これどうやって入手しているんだよ……

 愛理さんが部屋に返しに行った隙に黒瀬さんが口を開き俺に質問してきた。


「樹君パソコンのパス教えてくれない?」


「履歴を見ようとしないでくれるか?」


「エロ本ないんだもん」


「『もん』じゃねえよ『もん』じゃ」


「じゃあ使い捨てティ……あ、そっか。ゆきちゃんにしてるからないのか」


「おい?ふざけるのもいい加減にしたらどうだ?社長に言うぞ」


「配信外なので問題ないけど何か?」


 確かに配信外ならあの規則は適用されない。

 ただ事務所から出ている給料を少しばかり減らすことはできるだろう。


「この電話番号は何だろうな?」


「あ、すみませんでした。パスワードは諦めるのでハードディスクください」


「愛理さんのPC覗いてろ」


「はーい」


 返事をすると黒瀬さんは大人しく愛理さんの部屋へ向かった。

 何なんだよこいつら……

 二人とも何事もなかったかのように帰ってきた。


「じゃあ二度目の配信始めますか」


「じゃあ樹君はもう一度寝ようか」


「お前ら空いている部屋があるからそっちで配信してろ!」


 俺は愛理さんと黒瀬さんを何もなく使ってない部屋に連れていった。


「配信で必要なものを取りに来る時だけ出てこい。それ以外は認めないからな」


「「はーい」」


 俺はその部屋の扉を閉めてリビングに戻った。


「はぁ……マジで疲れる」


 二人を相手するのがこんなにも疲れるなんて思ってもいなかった。

 愛理さんはいいとして黒瀬さんはいい年してこれなんだもんな……

 siveaメンバーのオフコラは配信は見るだけだったら尊いだけか最高なだけだが対応をするとなるとこんなにも疲れるんだな。

 こんな奴らのマネージャーさんお疲れ様です。


「飯食うか」


 俺が寝ている間に二人は夕食を済ませてしまっていたようだ。

 食卓にラップをして置かれている飯を温めてから食べた。


「じゃあ何か買ってくるよ」


 部屋から黒瀬さんが出てきた。

 言葉からして近くの店に何かを買いに行くつもりだろう。


「丁度いい。樹君も一緒に行こうか」


「何で俺が……」


「少し話したいこともあるからねぇ」


「はぁ……」


 俺は立ち上がりリビングを出てコートを取ってから家を出た。

 流石にもう夜は寒いからな。

 十二月も半ばになりそろそろ雪が降ってもおかしくはないぐらい寒くなってきているからな。


「率直な質問だけどあれからどうしてた?」


「あれからは特に……俺の技術も父さんの会社だけに使うことにしたからな……」


「……まあこれからも普通に生きれば?ゆきちゃんがいるから無理そうだけど」


 確かに無理かもなと考え苦笑した。

 一つの質問だけでこんなにも空気が重くなるとは思ってもいなかった。


「そういえばゆきちゃんとはどこまで行ったの?」


「まだ恋人関係ですらないぞ。ただの許嫁同士の関係ってだけだ」


「許嫁だったら恋人になる必要ないと思うけど」


「そこは…ほら順序を踏んだほうがいいだろ」


「ゆきちゃんのことだから順序を踏む必要ないと思うけど。まあ大切かもしれないか」


 黒瀬さんの言う通り愛理さんなら順序を踏まなくてもいいというか俺が踏んでいる間に襲ってこようとするから必要ないのかもしれない。

 まあそれでも俺は順序を大切にしたいとは思っている。


「しかし許嫁とはねえ。そんな言葉ラノベか漫画じゃないと聞かないけどどんな感じなの?」


「人によるだろうな。俺らの場合はどっちも推しだったからお互いどういう人間なのかは知っていたからそんなにとは思うが」


「ん?樹君はゆきちゃん推しでゆきちゃんは樹君推しってことでいいよね?君もVtuberでもしているの?」


「ああ、半年ぐらい前に始めたが登録者数はご察しの通りだ」


「今は企業とかじゃないとなかなか伸びない世の中だからね。いっそのことsiveaに入れば?男性部門として」


「それはやめておこう」そう言おうと考えたが立凛のことを考えたら入ったほうがいいのかもしれない。

 最近立凛は認知度を高めるために色々と活動しているみたいだし入れば少しは認知度が上がるのかもしれない。

 でも俺は、


「やめておく。色々とこき使わされそうだからな」


「確かに社長の負担を分けられるかもしれないね」


「あぁ……それは勘弁してくれ」


 軽く笑い飛ばしながらもお互い今の話をしているとあっという間にコンビニに着いた。


「というかこんなにのそのそしている場合じゃなくないか?配信中だろ?」


「あ!確かにそうじゃんか!……樹君急いで買ってきて」


「俺!?金渡してくれ」


 一万円札だけ俺の手に渡された。

 コンビニでこんなに使わないだろ……


「何買ってくればいい?」


「甘いのと夜食になりそうなものあと酒のつまみ」


「酒はあるんだろうな?」


「瓶一本と缶は十本ぐらいあるから大丈夫っしょ」


 いつそんな量の酒を家に持ち込んだんだよ!そう思いつつも俺は言われた物を急いで買った。

 なんで俺はいつもsiveaの人間にこき使われなきゃならないんだよ。

 そう思いつつコンビニを出ると店の横で煙草を吸っている黒瀬さんの姿があった。


「吸うか?」


「俺未成年だけど?」


「未成年?」


「はぁ……行くぞ」


「ああ、ちょっと待て。吸い切ったらにしてくれ」


 俺は黒瀬さんをガン無視して先に家に向かった。









 家へ帰り愛理さんが配信している部屋の前に買ってきた物を置き冷蔵庫にある黒瀬さんが帰ってくるまでに酒を出しておいた。


「ただいま~」


「お前の家じゃないからな」


「辛辣ぅ。あ、用意してくれていたの。サンキューじゃあ配信に戻るね」


 嵐のような勢いで配信へ戻っていった。

 俺は自分の部屋で愛理さんたちの配信を黙って見ることにした。









 〈愛里視点〉


 黒が帰ってきたはいいけれどなんだか重そうなレジ袋を持ってきた。

 後ろに何か見えてるし……


「ただいま~ほいこれ」


「ありがと……なにそれ?」


「私の可愛い可愛い酒だよ?」


「いつ持ってきたんですか!?」


 私が見ないうちにこの家の中に運ばれていたみたい。

 ちゃんと余っても持ち帰ってくれるといいんだけど……

 私も樹さんも飲まないので余っても困る。


「飲む?」


「飲まないよ!私未成年だってば!」


「怖い怖い。ん?声が遠い?ほいじゃあもうちょっと近づくね」


「黒近いってば」


 この人の本名は黒瀬玲奈だけどVtuber名は鴉菜 黒からすな くろで活動しているので私は黒って呼んでいる。

 一期生の中で一番リアルでもよく会う人で仲も良く私の数少ない対面して敬語で話さない相手だ。

 でもさっきは樹さんが居たからずっと敬語になっちゃったけど……

 黒が近くに寄ってくると煙草の匂いがした。


「煙草臭い」


「え?酒で臭い消しするね」


「馬鹿なの?」


 黒は一缶を一気飲みした。

 今度は酒臭いんだけど……


「ゆきちゃんこっち来て」


「口移ししようとしないでよ」


「ちぇっ、酒飲ませて酔えば簡単に堕ちると思ったのに」


「もーお酒はダメだってば。持ってくるならウイスキーボンボンとかにしてよ。あれなら大丈夫だからさ」


「あるよ?」


「あるの?」


「はい」


 何か別の袋を取り出すとその中には色々なものが大量に入っていた。

 その中をガサゴソといじって私にウイスキーボンボンの箱を手渡してきた。


「はい、あげる」


「大阪のおばちゃんの上位互換なんですか?」


「なにそれウケる」


 そう言いながらまた袋の中をいじりだした。

 これならコンビニに行ってもらう必要なかったんじゃ……


「コンビニの袋の中身全部出しておいて」


「あ、ケーキに菓子パンワッフルらしきものそれに…カップ麺、柿ピー、なんですかこれ貝ひも?」


「なんか干物みたいなやつでしょ?」


「後半全部酒のお供じゃないですか!」


「でも美味しいよ?」


 本当においしいのかな?少し食べてみようかな……

 袋を開けて色々と食べてみた。


「意外とおいしいですね」


「でしょ~」


「夜にこんなにたくさん夜食を食べるなんて……ギルティかも」


「確かにね~今日ぐらいは……同接2万人!?うそでしょ!こんな配信に?」


 そう言われて私が配信の同接を見てみると本当に2万人、というかそれを越す数の人たちが集まっていた。

 オフコラ配信にこんなに集まるのって滅多にないけど……

 なんだか恥ずかしくなってきた。


「キスはしないよ」


「え?しないの!?しようよ~一緒のお願いだからああ」


「嫌です」


「拒絶された……」


 コメ欄で『キスしろ』と何人からも言われたから拾ったけど私のファーストキスは樹さんにあげると決まってるから黒とはしない。

 黒は酔いが回ってきたのか饒舌になり同接2万人もいるからかコメ欄も加速していった。

 配信いつやめよう……

 私は心の中でそう思いながらもこの僅かな時間を楽しんだ。









 〈樹視点〉


「あ~終わった終わった」


「今日泊まるだろ?」


「え~あーうん。ソファー借りるね」


「愛理さんとベット使ってくれ俺がソファーで寝るから」


「うっ……飲み過ぎた……」


 黒瀬さんは俺が用意した水を一気飲みした。

 こんなになるまで飲むんじゃねえよ……

 一方愛理さんは……


「樹さ~ん運んで~」


「はいはい……」


 愛理さんはウイスキーボンボンのせいか軽く酔っていた。

 俺は愛理さんの元へ近づき背負ってリビングのソファに座らせた。


「愛理さんもう寝るか?」


「寝ま~す」


「黒瀬さんは……」


「寝るよ」


 俺は愛理さんをもう一度背負い寝室へ運び横にさせた。

 二人ともこうなるんだったら最初からやめてくれよぉ。


「ほら黒瀬さんも」


「樹君成長したねえ」


「ほーら」


 黒瀬さんも背負い愛理さんの横へ運んだ。


「すぐ寝ろよ」


「樹さんは?」


「すぐ寝るよ。後片付けしたらな」


「はーい」


 そう言うと愛理さんは目を瞑って寝てしまった。

 後片付けまで俺がやらないといけないとはな……

 黒瀬さんは……

 声を掛けなくてももう目を瞑って大人しく寝ていた。

 俺は二人が配信していた部屋へ戻り後片付けをしてからリビングのソファーに座った。


「もう三時かよ……」


 明日は土曜日だし気にせず寝ていられるがこんな時間まであいつらの世話をすることになるとは思わなかった。


「はぁぁぁ」


 最後に大きなため息をついてから俺はソファーの上に横なって寝た。









 朝になり目が覚めるといつもとは違う場所にいることに気が付いた。

 ああ、そういえば昨日は黒瀬さんが来て……

 二人にはベットで寝てもらって俺はソファーで寝たんだった。

 まだ寝たりなく重たい瞼を開けてみれば時計を見てみればもう針は七時を指していた。


「あいつらまだ起きてないのかよ」


 流石に今の状態のあの二人に料理をさせるわけにはいかないので俺が朝飯だけ作っておいた。


「おは……うっ……」


「そこで吐くのだけはやめろよ」


「あーはいはい流石に人の家で吐くわけには……ヘルp……うっ」


 今にも吐き出しそうにしているのでトイレに連れて行った。

 黒瀬さんをトイレの中に閉じ込めてからリビングに戻ると愛理さんも起きていた。


「頭が痛い……」


「ほら水でも飲んでおけ」


「ありがとうございます……」


「全くあんな時間まで起きてPCの画面を見ているだけでも体に悪いっていうのに夜食を取ったり酒飲んだりして……はぁまったく世話が焼けるな」


「樹くーん二日酔いの薬買ってき……おえぇ」


 あの様子じゃ本当にひどそうだな。

 俺は急いでコンビニに行き二日酔いに効きそうな物とスポドリを買って帰ってきた。


「愛理さん頭痛薬要るか?」


「うちにありましたっけ?あるのなら貰いたいです」


「俺のがある。あとこれ飲んどけ」


 愛理さんの前に頭痛薬とスポドリを置いて飲んだのを確認してから黒瀬さんの様子を伺いに行った。

 まだトイレから出てこないってどんだけ吐き気が来てるんだよ。

 確か缶全部分飲んでたか……

 瓶のほうは流石にヤバかったのか飲んでいなかった。


「二日酔いに効きそうな物買ってきたぞ」


「ありが……おえぇえええ」


「背中さすろうか?」


「いや高校生に迷惑を掛けるわけには……うっ」


 こいつ何回吐くんだよ……

 コンビニ行く前は「人の家では吐かない」と言っていたのを思い出した。

 そしてもう一度吐くと顔を上げて、


「あーもう出るもんでないわ」


「おい、まあまず口の中洗ってこい。気持ち悪いだろ」


「肩貸して」


 これが大人と思っていいのだろうか?

 そう思いながらも肩を貸し洗い場まで運んだ。


「あー少しすっきりした」


「ほらこれ飲んどけ」


 俺は黒瀬さんの手に二日酔いに効きそうな薬を乗せて愛理さんの様子を見に行った。

 二人の面倒を見るの大変すぎるだろ……


「愛理さん、良くなったか?」


「なーんで黒の事ばっかり構うんですか~ずるいです」


「愛理さん。あいつがこの部屋の真ん中で吐いたらどう思う?」


「気持ち悪いです。片付けるのも面倒なので二度と家に居れません」


「うん、だからあいつに部屋の真ん中で吐かせないためにもこうして介護しているんだ」


「でもずるいです」


 頼むから我儘言うのをやめてくれええええ、と俺は心の中で叫んだ。




 黒瀬さんは二日酔いに効きそうな薬を飲んだからか大分落ち着き愛理さんも落ち着いて構ってほしいと言わなくなった。


「じゃあ私はこれ以上長居して迷惑だろうから帰るよ」


「酒持って帰れ」


「あげる。あと余ったのとかもあげるよ」


「酒は飲まねぇんだよ」


「お客さん用に取っておけば?」


 あいつ荷物が増えるのが嫌だからって高校生二人に酒を押しつけやがった。

 荷物をまとめるとすぐに黒瀬さんは出て行ってしまった。


「んー疲れましたね」


「それは俺のセリフだ。愛理さんは何もしていないだろ」


「……確かに?」


「確かに?じゃないわ!」


 最近愛理さん暴走気味なせいで結構俺が疲れる羽目になっている。

 いい加減大人しくしていてくれ……

 というか前の愛理さんに戻ってもらえると大変ありがたい。


「……樹さん。やっと二人きりになれましたね」


「俺はその流れに乗らないからな」


「ちぇ~面白くないですね~」


「俺はもう寝るからな」


「二度寝ですか?」


「お前らのせいでまともに寝れてないんだよ!」


「あははは……」


 俺はソファーに再び横になり目を瞑って半日を寝て過ごした。

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