第27話 準備万端


「お前ら!若を将軍にしたいんだろ!?」


 そして今に至る。桃子の目にはシャンパンタワーの煌めきが写っていた。


「同担?上等だよ!私たちは戦友だ!若を将軍にするぞ!」


 桃子の声明に女中達は不思議と心奪われていた。


 一方で、福が控える部屋に一人の女中が騒動の詳細を告げていた。女中から話を聞き終えると福は溢れるように盛大に笑った。目には微かに涙を浮かべていた。


「桃子よ、あの女は一体どこまで妾の範疇を超える脅威となるのじゃ」


 福はまだ笑っている。


「他の者達はどの様な反応をしておった」

 と福が女中に聞く。


「は、何というか、皆聞き入っておりました。」

「そうか、良い話を聞いた」


 福は片方の口端を持ち上げるだけの笑みを浮かべた。

 改めて桃子の破天荒さを見聞きし、今一度、自身の目に狂いはなかったと自負する。

 

 福は思い出したかの様に破顔した。扇子で口元を覆って笑いを押し殺す。

 そして、福は一呼吸おいて声を上げた。


「頃合いじゃな」


 福は扇いでいた扇子を閉じた。

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