第22話 桃子の過去
「今日は桃子様、大活躍でしたね」
桃子の部屋に戻ると紫乃は言った。その声色は嬉々とした響きが感ぜられる。
「ねぇ〜」
桃子は他人事の様に返事した。
「なんか桃、冴えてたわ。ヤニ摂取したおかげかも」
既に手慣れた様子でキセルを蒸す桃子。紫乃は苦笑を浮かべながら桃子に問う。
「桃子様はなぜ食に詳しいのですか」
桃子は一服ふかしてから言う。
「桃ね、昔太ってたの。桃ノ海〜!なんて言われちゃって。まじ病んだ。なんでお前に言われなきゃいけねーんだよみたいな。かーなり病んで病みまくって、地底まで落ちてブラジルこんにちはぐらいまで病んだの」
紫乃は真面目に聞いていた。桃子としては多少ほくそ笑むのを望んでいた。
桃子は黒歴史を語る際、相手が気を遣った様な表情を浮かべる空気感が苦手であった。
「痩せる為にご飯食べるのやめて、酵素とかめっちゃ飲んだ。あと三分でできる筋トレみたいな…ま、そういうのやって一五キロぐらい落としたのかな?でも体重落としても太って見えて、もっと落とさないとって思ったの。そしたら何も食べれなくなっちゃって。口に入れたら吐くの繰り返し。やばくない?で、そんなあたしを心配しておばあちゃんが雑穀米送ってくれたの。栄養たっぷりで、お粥とかにしたら食べやすいんじゃないかって。で、少しずつ食べれる様になったってわけ」
桃子は言い終えると一服蒸した。揺蕩う煙を細目に眺めながら、祖母や疎遠である父母、桜庭レンを想う。
ご飯はしっかり食べているだろうか?
娘を失った悲しみにくれて仕事に支障をきたして無いだろうか?
売り上げは保っているだろうか?
桃子はふっと煙に息を吹きかける。たちまち煙は消えていった。桃子の心に浮かぶ様々な想いも同じ様に消えていく。
⭐︎桃子の小話
大奥の給料事情なんだけど、内訳は基本給としてお米が支払われてたらしいよ。で、現金で衣装・化粧代、いや、まとめて現金くれよって思わん?あと、御扶持っていう毎日のご飯代、これは自分と使用人の分で桃の場合、桃と紫乃、二人分って感じ。他にも薪代とか調味料代とかあったらしい。ちなみに当時大奥で働く人ってバリキャリだったぽい。桃、めっちゃ社内ニートなんですけど、みたいな。福は相当貰ってたに違いない。
あと、ちよたんの食嫌いを克服する為に誕生した『七色飯』
●菜飯…青菜の炊き込みご飯
●小豆飯…お赤飯
●麦飯…大麦と白米の混ぜご飯
●粟飯…粟の炊き込みご飯
●湯取り飯…沸騰した水でご飯を茹でた後に蒸したご飯
●引き割り飯…米粒を割って炊いたご飯
●干し飯…干したお米(のちに蒸してふっくらさせて食べるとか)
春日局は『お命をつなぐものの第一は飯なり』生きる為には一番にお米食べなっていう言葉を残してるよ。まじ先人の言葉って間違いない。
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