第21話 七色飯
「ちよたん、全然食べないじゃん?」
桃子の言葉通り、竹千代は食が細く虚弱体質だ。
「雑穀米とかないの?知ってる?玄米とかあわとかキビが入ってるやつ。たんぱく質、ミネラル、栄養たっぷりなんだよ。色々な穀物入ったお米食べさせたらいいと思う」
桃子自身、食が細く、あまり食べる方ではなかった。そんな彼女は簡単に栄養の摂れる雑穀米が主食であった。
「なるほど…」
と福は聞きなれない単語は省き、玄米、あわ、キビのみに着目した。
のちに福は七色飯という、小豆飯や麦飯、粟飯など幾つかの飯を膳に並べ、竹千代が食べたいものを選べる様にする、といった方法で竹千代の食嫌いを克服することに成功する。
福は続けて
「太い後ろ盾とは、どの様なものだ?」
と聞いた。
「ちよたん派の人を増やすとか?」
桃子は首を傾げながら言った。桃子自身、二つ目の策略に関しては自信がなかった。
「桃、わかんなーい」
とキャパオーバーした桃子が声を上げた。
「よい。もう良いぞ、桃子。十分だ。そなたの助言通りにゆこうと思う」
福の言葉に女中達は皆、安堵した。
「桃子、ありがとう」
福は、やはり自身の目に狂いはなかったと自賛した。
一見、感情的で無駄話の多い様に見える桃子だが、いざという時に鶴の一声とも称することが出来るほどの声を上げる。彼女は、この江戸幕府を大きく動かす力になり兼ねないと福は更なる期待を桃子に抱いた。
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