第10話 推し活再開
桃子は桜庭レンの辿々しい喋りと白画用紙の様にひょろりとした頼りない身体を見て、思ったのだ。
あたしがこの子を支えてあげないといけない!!
こうして桃子は桜庭レンに沼っていった。
そして現在、桃子は目の前にいる竹千代にも桜庭レンと同じ感情を抱いた。桃子は勢いよく立ち上がった。そして宣誓をする様に手を挙げた。
「はい!桃、ちよたん推します!」
「ち、ちよたん…?推す…?」
桃子の言動が理解出来ず、皆が困惑の声を漏らす。
「たけちゃん?ちよちよの方がいいかな?まぁいいや。福!あたしも協力するよ!」
桃子は心踊っていた。そしてその感情が目に現れ、キラキラと輝いている。
「絶対にちよたんをナンバーワンにする!」
桃子の推し活の精神に火がついた。そんな桃子を見る女達は愕然としている。
そんな中、竹千代は穏やかな表情を浮かべていた。もうすでに将軍としての威厳が備わっている様である。
「桃子。そなたの申してる事はよくわからぬ。じゃが、同じ志を持つ事は伝わった。頼むぞ」
福の期待を込めた言葉に桃子は大きく頷いた。
「今日はもう遅い。終いじゃ」
福の一声により騒動は幕を閉じた。
***
後に、福の部屋に一人の女がやってきた。
「私は納得いきません」
その女、玉緒。彼女もまた福に全幅の信頼をよせる武家出身の年長者であった。
「どこの家の出か分からない。意味のわからない言葉を申す。将軍の世継ぎを産むものとして相応しいのでしょうか」
ある程度の身分のものでなければ、世継を産めない。桃子などあり得ない存在であった。しかし、玉緒の言葉に福は大きく笑った。
「玉緒。何も側室が桃子一人とは申しておらぬ。将軍の望みと其方たちの器量次第じゃ。そなたも精進せよ」
「…はい」
福の挑発的な口ぶりに、玉緒はぎゅっと拳を握りしめた。
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