第9話 桜庭レンとの出会い
遡る事2017年冬———
この日も桃子は店を訪れていた。この時まだ、桃子は桜庭レンを知らない。別の担当がいたのだ。
しかしこの日、桃子の担当である橘ヒュウガが店を飛んだ事により運命的(桃子がいうに)な出会いをする。
「えっ待って。ヒュウガ飛んだの!?」
「昨日から連絡取れなくて…」
店の代表が申し訳なさそうに言うと桃子は席を立ち上がった。
「ヒュウガいないなら帰る!」
そう声を上げる桃子を代表は
「桃さん待ってください」
と呼び止める。手をすりすりと合わせながら、したたかな笑みを浮かべて代表は言った。
「実は今日新人がいて、桃さんタイプなんじゃないかなーって」
その言葉に桃子は目を光らせ、改めて席につく。もう担当は戻ってこないと悟った桃子は次なる推しを求めたのだ。
「え、金髪?わんこ系?」
桃子は食いつく様に聞いた。すると代表はニヤリと笑いながら言う。
「飛び切りのハイトーン金髪!ゴールデンレトリバーっす!まだパピーちゃん!」
「え!めっちゃ良いじゃん!呼んで呼んで!」
そうして興奮気味な桃子の前に現れたのが金髪マッシュ頭にひょろりとした肢体と病的な白さをもった桜庭レンであった。
「さ、桜庭レンです…」
桃子は一瞬にしてキューピッドにハートを打ち抜かれた。
「レンくんちょーかっこいい!私、桃子!桃ちゃんとか桃さんって呼ばれてるからレンくんも好きなように呼んでね!」
ぎゅっと距離を詰める桃子に桜庭レンは控えめに笑った。
「じゃぁ…桃さんで…」
と騒がしい店ではかき消されてしまう声量で言った。しかし、桃子にとってそれは返ってプラス点である。小さいが故に距離を詰めなければならない。さらにその儚さが桃子の心を掴んだ。
「あはは〜レンくん緊張してる?」
「ま、まだ、慣れてなくて…すいません…」
「レンくん可愛い〜」
桜庭レンは女慣れしていないのか、桃子と目を合わせる事ができない様でチラチラと彼女を見ていた。それすら桃子にとってはプラス点なのだ。
「桃決めた!レンくん指名する!」
桃子の心にはもう桜庭レンの存在しかなかった。
「桃、レンくんのこと応援するから絶対やめないでね!」
これが桃子と桜庭レンの出会いであった。
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