第13話 婚約破棄から3日目、さてどうしましょう

 リュークと話して、今日は自室で考えてみている。


 家族のようにしか思えない、だから18年間喧嘩もせずに一緒にいられたのかも、なんて。


 私は安寧の神の加護を受けている。そのお陰で、もしかして殿下も穏やかな心でいられただけなのかな。逆に、そのせいで私に対してときめくとか、そういう事が無かったのかもしれないのかな。


 加護ってやっかいだなと思う。殿下だって好きで眠れない訳ではないし、私だって好きで相手を穏やかにさせているわけじゃない。時には本音をぶつけて喧嘩したり、そういうものも大事なんじゃないかと思う。だって、違う人間なわけだし。


 こんな事でもなければ、私たちは『加護』のせいで一緒にいて幸せ、と勘違いしたまま一生を過ごしていたのかな。


 こうして離れて、私は胸が苦しいです。殿下が心配だし、殿下のいない生活はどこか味気ない。加護のせいで、ずっと一緒に育ったからなんだというのか。


 殿下が異性と接し慣れてないのは加護のせいじゃない。私という婚約者がいたからだ。だから、私がいないところで接した女性にときめく……可愛い子から距離が近くて、泣いたり笑ったりされて、嬉しくない人はいるのかは、分からないけど……ことになった。


 私が殿下を想うのは睡眠のためだけじゃない。一生懸命に何でも取り組み、できるまでやる所が好きなんだ。絶対にそれを表に出さないけれど、私は殿下が悔しそうにしているのも、もがいてきたのも知っている。そこが好きだからだ。


 ジュード殿下のことばかり考えている。本当に真実の愛ってあり得るのかしら。ときめくこと? 穏やかでいられること? そもそも、加護を持っているのが私たちで、加護が無い私たちを想像して何になるの?


 殿下は今幸せにしているんだろうか。私は自分から会いに行く気はない。フラれて悲しい気持ちでいっぱいで、反省すべきところはした。だけど、殿下、私は殿下の良いところをたくさん知っていて好きなの。


 ……簡単には許してあげない。ただ眠りたいだけなら、陛下に嘆願でもして私に仕えさせればいい。そうなった時、殿下の寝所で眠りにつかせ、長時間そばにいて部屋を出る女に、嫁の貰い手など無いだろう。


 必ず殿下のお手付きだと思われる。実際、もう手遅れな程私たちはずっと一緒にいすぎた。


 リュークと話していても、リュークも頑張ってきたのは知っているし、あれだけ気質もいいのに、私はリュークが好きな訳じゃない。友達だと思っている。……一緒の布団で寝るのは、あのベッドだとしても嫌だ。


 私と殿下から加護というものは切っても切り離せない。だけど、私の好きは、殿下のものだ。悲しいし悔しいけど、認めざるを得ない。


 だって、3日離れていて、私が何をするにも考えるのは、殿下のことだもの。


「ジュード殿下……」


 名前を口にしたら、涙が溢れた。


 手で顔を覆って泣いているうちに、階下が俄に騒がしくなった。

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