第1章 第19話

チョコを貰って、すっかり機嫌が良くなった私。

拓哉君とも普通に話せて嬉しい!


「チョコ貰ったら、ホワイトデーに何かあげるの?」


「そうだね。」


「何をあげる?」


「クッキー?」


「ママ、拓哉君が美味しいって言ってたクッキーあるじゃん?

あの店に連れてって。」


「うーん、でもあの店のクッキー高いよ?」


「え?」


「一個百円以上するけど?」


「うーん……。」


「見に行こうか?」


「うん!」


クッキーを売ってるのは、昔からある洋菓子店だった。


「あぁ……。」


クッキーの値段はママの言うように一つ百円以上している。

ちょっと大きいけど。


「ママ、拓哉君が好きなの、これだよね?」


「うん。」


「どうしよう?

二個なら買えるかな。」


「じゃあ、二個にしたら?

こういうのは気持ちの問題だから、一個でもいいよ?」


「二個にする。」


クッキーを二つ取って、店員に渡した。


「自分で食べますか?

プレゼントですか?」


「プレゼントです。」


「ラッピングはどうしましょう?

無料のだと袋に入れるだけなんですけど。」


「それでいいです。」


「メッセージカードも無料ですけど、良かったらここで書いて入れますか?」


「入れたいです!」


お金を払った時に、メッセージカードとペンを渡してくれた。




『たくやくんへ

いつもありがとう。

大すき。

さきより』




学校で習ったから『大』は書ける!

あとは漢字が分からないや。


「これ書けたから入れて下さい。」


「はい。

少々お待ち下さい!」


店員が袋に入れてくれるのを真剣に見た。


「お待たせしました。」


「ありがとうございます!」


「こちらこそ。

ありがとうございました。

またお越し下さいませ。」


店員に見送られて、気分良く帰る。


「沙希、拓哉君に渡して帰る?」


「うん!」


ママと拓哉君の家に行く。


「あっ、沙希ちゃん。」


家に着く前に拓哉君に会った。

するとママが、


「拓哉君、暇?」


そう聞いた。


「うん。

これから家に帰るだけ。」


「じゃあ、沙希を預かってくれない?

おばちゃん、ちょっと買い物忘れちゃった。」


「うん、いいよ。

家にいればいい?」


「うん。

お願いします。」


「はーい。

おばちゃん、行ってらっしゃい。」


「行って来ます。」


ママが買い物に行った。

多分、気を遣ってくれている。


「今日、誰も家にいないんだけど。」


拓哉君がドアの鍵を開けてくれた。


「どうぞ。」


「おじゃまします。」


「適当に座ってて。

沙希ちゃん、ジュース飲む?」


「飲む!」


目の前のソファーにドーンと座った。


「はい。

ジュース、どうぞ!」


「ありがとう。

いただきます。」


ジュースをゴクゴクって飲んだ。


「凄い勢いだね。

喉が渇いてたの?」


「うん。

考えてたら、喉が渇いちゃった!」


「え?」


「あのね、これ……。」


拓哉君にクッキーを渡した。


「この袋って……。」


「拓哉君、好きでしょ?」


「うん。

でも何で?」


「チョコ貰ったから。」


「あぁ……そういう事か。

ホワイトデーって事だよね?」


「うん。」


「嬉しいよ。

ありがとう。」


拓哉君が嬉しそう。

私も嬉しいよ。








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