第1章 第11話

お泊まり会以来、義郎君は私と遥ちゃんを避けている。


「ちょっと!

何で無視するわけ?」


遥ちゃんが義郎君にキレて、義郎君がまた泣いた。


「遥ちゃん、どうして義郎君泣いてるの?」


「無視するから怒ったの!」


「あら……。」


先生は義郎君がお泊まり会以来、私達を無視してると気付いている。

別に私は無視されてもいい。

だって、話したいと思わないもん。

だけど、用があったら話す。

遥ちゃんも用があって話しただけなのに。


「義郎君、無視しちゃダメでしょ。

遥ちゃんは、義郎君の物を拾ってくれたんだよ?

ありがとうだよ?」


先生が珍しく、ダメって言った。

あんまりダメって言わないのに。


「うわぁーん!」


義郎君が泣いている。


「先生が泣かした!」


「泣かした!」


「先生が泣かしたら、誰に言うの?」


「園長先生?」


クラスの皆が騒いでいる。

悪いのは義郎君なのに。


「義郎君なんて大嫌い!」


遥ちゃんが怒っている。


「うわぁーん!」


義郎君、余計に泣く。


「遥ちゃんも泣かした!」


「だったら何?

無視したから嫌いって言っただけじゃん?

無視されたら嫌いにならないの?」


「それは……。」


「ムカつくんだけど!

謝って!」


「何でだよ?」


「もう、アンタも嫌い!」


「うわぁーん!」


遥ちゃんがもう一人泣かした。


「どうしました?」


騒がしい、うちのクラスに気付いた、隣のクラスの先生が様子を見に来た。


「すみません、お騒がせして。」


「ううん。」


「はぁ……参ったな。」


「え?

どうしてこんな事に?」


「恋愛関係のもつれが発端と言いますか……。」


「へ?」


「いや……。

お嫁に来てとプロポーズされて断ったのがキッカケ?」


「えっと……。」


「プロポーズを断って、断られた人が断った人の友人を無視するから、何で?ってなった感じ。」


「ん?

それ園児の話でしたよね?」


「そう。

どうしたらいいの?

大人でも困るわよ?」


「うーん……。」


先生同士で困ってる。

私のせいだよね?

でも私は拓哉君しか嫌なの!


「えっと……。」


「すみません、ややこしくて。」


「いえいえ。」


「嫁に来て欲しいって言って、お断りって言われたら気まずいじゃないですか?」


「まぁ……。」


「でも同じ空間で日々生活するわけですよ。」


「うーん。」


「辛いと思うんです。

でも結婚したくもない人にプロポーズされたら、勿論お断りじゃないですか。」


「そうね。」


「そのお断りされた相手の親友が、落とし物してるよって声をかけてくるわけですよ。」


「うーん。」


「気まずいですよね?」


「そうね。」


「気まずいから無視しちゃったわけですよ。」


「ほぅ……。」


「誰が悪いですかね?」


「うーん。

落とし物を教えてくれたからには、ありがとうと言うべきかと。」


「それで、ありがとうと言うべきだと伝えたら、泣いちゃいました。

どうしましょう?」


「あぁ……。」


先生は解決方法が見つからない。

義郎君はまだ泣いている。

遥ちゃんはイライラしている。

そして、そこでまさかの昼食の時間が来る。


「あっ、ご飯……。」


何故か義郎君は泣き止み、遥ちゃんも普通にしている。

とりあえずこれで……いいのか分からない。




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