第1章 第10話

幼稚園の行事で、お泊まり会がある。

お泊まり会の時の話。


「沙希ちゃん、小学校どこ?」


同じクラスの赤田義郎あかだよしろうが話しかけて来た。


「東小学校。」


「そっか。

俺、西小学校。」


「ふーん。」


別にどうでも良い質問された。


「沙希ちゃん、小学校になったら離れちゃうね。」


「うん。」


「寂しいね!」


「うん。」


本当は寂しくない。

面倒だから返事しておいた。


「あのさ……。」


何か言いかけた義郎君を邪魔するかのように、


「ねぇねぇ、沙希ちゃん!

今日のご飯、カレーライスだって!」


遥ちゃんが話しかけて来た。


「え?

カレーライス?

甘口?」


「子供だから甘口でしょ?」


「だって遥ちゃん、中辛食べられるんでしょ?」


「食べれる!」


「凄いな。

私は無理。」


「無理でいいよ、子供だから!」


遥ちゃんの口癖は『子供だから』みたい。


「園庭でスイカ割りするんだって。」


「え?

スイカ割り嫌い!」


「何で?」


「歩けない。」


「あぁ……。

転んじゃう?」


「うん。」


「平気だよ、子供だから。」


それは子供だからとか関係ないんじゃ……。

そう思っても言わない。

カレーライス嬉しい!って思ってたけど、スイカ割りは嫌。

『ヤダヤダヤダヤダ』って思ってたら、お腹痛い。


「どうしたの?」


「お腹痛い……。」


義郎君が気付いてくれた。


「せんせーい!

沙希ちゃん、お腹痛いって!」


「えぇー?

大丈夫?

ちょっと教室で休んでる?」


「うん……。」


スイカ割りは休めるけど、お腹が痛い。


「ついてて、あげる。」


義郎君がそばにいた。

義郎君じゃなくて拓哉君が良かったな。


「沙希ちゃん。」


「ん?」


「あのさ、沙希ちゃんの事が好きなんだけど。」


「え?」


「お嫁さんになってくれる?」


「無理。」


「何で?

嫌いなの?」


「私は拓哉君のお嫁さんになるの!」


「そんな……。」


義郎君が泣き出した。

お腹痛いし、慰める元気が無い。


「ゴメン、トイレ!」


私はトイレに行った。

もうビックリするくらい、出た……。

便秘というヤツだったみたい。

はぁ…スッキリした!と思って教室に戻ると、遥ちゃんが走って来た。


「沙希ちゃん、義郎君泣かして逃げたって本当?」


「え?」


「義郎君がそう言ってる。」


「え?」


私が悪いのか?

違うと思う。

先生が凄く良い人だったから、話を聞いてくれた。


「沙希ちゃん、泣かしちゃったの?」


「……。」


「どうして泣いたと思う?」


「無理って言ったから。」


「何を?」


「お嫁さんになってって言ったから。」


「あぁ……。

それで、泣いたから逃げたの?」


「逃げてない。」


「え?」


「お腹痛いからトイレ行った。」


「お腹壊しちゃった?」


「ううん。

でもいっぱい出た!」


「そうなんだ。

もう痛くない?」


「うん。」


「じゃあ、スイカ食べようか?」


「うん!」


スイカを食べる事になった。

義郎君は泣きながら食べてる。

それを見た遥ちゃんが、


「いつまで泣いてるの!

男でしょ!」


そう言ったら余計泣いた。











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