第1章 第9話
ホワイトデーが終わって、しばらくして。
幼稚園の年長さんになった。
「沙希ちゃん、来年小学生でしょ?」
「うん。」
「ランドセルは何色がいいの?」
ばあちゃんが言った。
このばあちゃんは、ママのママ。
ママのママだから、ママが心配で来る。
ママに会いたい、沙希ちゃんに会いたいって来る。
パパのいない時に来る。
よく分からないけど。
「気を遣わせたくないからね。」
そう言ってたけど、パパに会いたくないんだろうって思ってた。
「ばあちゃん、私ね、黒いランドセルがいいな。」
「え?
黒が好きなの?」
「ううん。
拓哉君と同じがいい。」
「でも黒は好きじゃないんだよね?」
「うん。」
「じゃあ、違う色がいいんじゃない?」
「ヤダヤダヤダヤダ!」
好きな人と同じのが良いに決まってる!
「沙希、黒は男の子っぽいよ?」
「いいの!」
「でも女の子で黒いランドセルの子は見た事無いなぁ……。」
「いいの!」
「本当は違う色が好きじゃん?」
「いいの!
黒がいい!」
ママに言われても、ばあちゃんに言われても、黒が良い!
お揃いがいいよ!
「はぁ……困ったね。」
「うん……。」
困っている意味が分からない。
悪い事してないよ?
でも小学校に入って気付く。
困らせてゴメンって。
本当に女の子で黒いランドセルの子はいなかった。
男の子は黒が多かったけど。
「沙希ちゃん、ランドセルは黒なの?」
どこから話を聞いたのか拓哉君に言われる。
「うん。
拓哉君と同じ!」
「同じは嬉しいね。
でも俺は沙希ちゃんに似合わないって思う。」
「え?」
「沙希ちゃん、何色が好きなの?」
「ピンク……。」
「ピンク好きなんだ?
それならピンクにしたらいいよ!」
「でも……。」
「ピンク似合うよ!
可愛いと思う!」
「可愛い?」
「うん、可愛い!」
「じゃあ、ピンクにする!」
「うん。
楽しみだね!」
「うん!」
結局、拓哉君に説得されて、ピンクのランドセルに決めた。
「沙希ちゃん、ピンクにするって!」
「え?」
「好きな色がピンクっていうから、ピンクにしたらって言ったんだ。
それで良かった?」
「うん、良かった。
でも沙希、ピンク好きなんだ?」
「え?
おばさん、知らなかったの?」
「うん……。
水色とか青が好きなのかと思ってた。」
確かに水色とか青が好きだった。
でも拓哉君がピンクのリボンが可愛いって言ってたから、私もピンクが好き。
いっぱい可愛いって言われたい!
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