第43話 格差社会の縮図
私たちが追い付くと、ちょうど綺沙良が日向ちゃんをフィッティングルームへ入れたところだった。
「え、もう選び終わったの……?」
「来宵っちと体型似てたからすぐだったぜ。どっちかと言うと日向ちゃんはクール系って感じだけども」
しばらくしてフィッティングルーム内から呼び掛けがあり、私は中に入る。
「ど……どうですか?」
綺沙良がチョイスしたのはマリンブルーのワンピースタイプだった。水飛沫のような模様が散りばめられており、腰周りにフリルがついている。日向ちゃんのスレンダーな肢体とマッチしていて、はっきり言って滅茶苦茶可愛い。
「いい!凄くいいよ!!似合ってる」
反射的に私の口から称賛の言葉が飛び出した。
「そうですか……?こういうのは着るの久しぶりで……」
日向ちゃんの全身を舐めるように眺めながらグルグルと回る綺沙良と、それは特に気にした様子もなく自分の体を見回す日向ちゃん。細い腰がその度に捻られる。
……というかマジでウエストほっそいなどうなってんだ。私も運動量多いしウエストは締まっている自信があるけど、流石にあそこまでじゃないんだが……?
「……細い」
隣の鳴衣も眼鏡を光らせながら言っていた。だよね、細いよね絶対。
「うんうん、私の目に狂いはなかったね!日向ちゃんスタイルいいから映える映える。てか腰ほっそいなぁ羨ましいわ……運動してるからかな?」
「あまり意識してはいないんですが。……おそらくそうだろうとは思います」
「くびれは武器だからねぇ。是非ともそのままでいて下されよ?じゃあ次、めいめいね」
「……え?私?」
きょとんとした顔のまま、鳴衣は綺沙良に捕まった。
◼️◼️◼️◼️◼️◼️
ところで。
鳴衣は基本的にはおとなしい女の子である。
創作物が絡まなければ、時としてカタツムリ並みの速度感を発揮し周りの人間に置いていかれていることも数多い。
そんな彼女の普段の服装もまた、露出がほとんどないおとなしめなTHE・文学少女スタイルであまり注目を集めることもないのだが。
私と綺沙良は知っている。
奴は――脱ぐと弾けるのだということを。
「き、綺沙良。これは流石に……」
「何言ってんのめいめい!君のカラダは魅せなきゃ損だぜ?」
ルーム内からはなんか抵抗する声が聞こえていたが、綺沙良はそれには構わず私と日向ちゃんをルームへ引っ張り込んでしまう。
鳴衣が身に付けていたのは、濃淡のはっきりした桜色を基調としたボーダーのビキニだった。普段の鳴衣なら絶対に選ばないし着ないチョイス。そのギャップと内に秘められていたExcellentなサイズ感の凶器によって男子連中はもれなく皆殺しだろう。
「(棗先輩、着痩せするタイプだったんですか)」
「(そうなんだよー……)」
日向ちゃんの「素晴らしいと思いますよ、先輩!」という感想に続いて小声でやり取りをするぺたんこ2人組。何しろ隣で鳴衣の水着の微調整をしている綺沙良もGreatなサイズ(今はHyperかもしれない)なので絵面の圧力が凄い。
「イイと思うよー鳴衣。華やかだわ」
「声が平坦!」
あれおっかしーなー私は普通に誉めたつもりなんだけどなー。何故か声から抑揚が消えるなー。
「ほらほらぁ、こよいっちからも日向ちゃんからもお褒めの言葉が来たぜ?自信持っていいんだよめいめい」
「その割には来宵の目、凄く淀んでるんだけど……?」
ヨドンデナイ、ヨドンデナイヨー?格差社会ガワルインダヨー。いやほんと……何処で差が付いたんだ私と2人とで。
「そんじゃ後は私とこよいっちねー。一緒にやっちまいましょ」
そして、鳴衣が普通の服に戻った後の綺沙良の発言がこれである。
「待って綺沙良。私と綺沙良が並んだら私絶対インパクト負けして消えちゃう……!」
「私の胸程度で消える程こよいっちの存在感は薄くねーっすよ。ほらほら観念しろー」
「いやぁあああああ……」
抵抗むなしく、私は綺沙良にフィッティングルームへと引き摺り込まれてさっさとひん剥かれた――
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