友達
教室に入ってからも、僕たちはみんなの注目の的である事は変わらず。
というか、二人一緒に行動してるせいか色々な憶測が飛び交っている。
僕も、橘みたいに割り切ることが出来れば良いんだけど。
名字が一ノ瀬ということもあり、僕の席は前から二番目。
故に、後ろからの視線をすごい感じる。
自意識過剰と言われれば、そうかもしれないけど。
感じでしまうものは、感じてしまう。
ちらりと橘の方に目をやると、入学式の時と同じように何も気にしてない様子。
なんか、ダルそうにスマホを眺めてる。
心なしか、橘の口角が少し上がっているように見える。
微笑んでるとも言えない程ではあるけど。
何を見てるんだろうか。
そんな僕の視線に気づいた橘は、ふふっと爽やかな笑みを向けてくる。
……いや、めっちゃかっこいいんですけど。
なにあの人、僕を堕とそうとしてる?
堕ちるけど、堕ちるとこまで堕ちちゃうけど。
ダメだよ。
勘違いしちゃうでしょ。そういう年頃なんだから。
と、とりあえず、僕も笑い返しておこう。
それが、友達ってものだと思う。
* * * *
一ノ瀬が私に向けた笑みは、とてつもない破壊力を持っていた。
いや可愛いすぎる。
頬をほのかに赤く染めながら、えへへとはにかんだ笑み。
ダメだよそれ、そんな顔見せたら男子みんな惚れちゃうよ。
というか、女子も惚れちゃいそう。
やっぱり、一ノ瀬は自分が可愛いのを分かっているような気がする。
というか、あれを天然でやってたら、それはそれで怖い。
とりあえず私は、できるだけポーカーフェイスを維持して、スマホへと目を戻した。
* * * *
段々と同じクラスの人達が教室に集まってきて、大体は席についている。
なんというか、今更ながら高校生になったんだという自覚が芽生えてそわそわする。
果たして、僕はちゃんと友達を作れるのだろうか。
中学時代も、ちゃんと友達と呼べる人はいた。
しかしそれは女子であり、男の友達なんて出来たことない。
いや、僕だって男の友達を作る努力はした。
でも、僕が話しかけると、みんな頬を赤らめて逃げてしまう。
そんなこんなで、僕は男の友達が出来たことがない。
そんな時だった。
目の前に座る男子生徒が僕の方に振り返る。
その男子生徒に対する、僕の第一印象はこうだった。
「ヤンキー」
「ヤンキーじゃねぇ!」
即座に否定された。
そうだぞ一ノ瀬涼、人を見た目で判断してはいけないのは僕が一番分かってるだろ。
「ごめん。もう足を洗ったんだね」
「元ヤンでもねぇよ!」
逆になんでその見た目でどっちでもないんだよ!
その男は、目つきは鋭く、髪も茶色でオールバッグ。
いわゆる、オラオラ系ってやつ。
あと、まあまあイケメン。
じゃあ、オラオラ系イケメンか。
「それで、僕に何か用?」
「いや、用っていうか」
言って男は、僕の顔をじっと見てこう言った。
「お前、女だろ?」
「違うよ!」
即座に否定してやった。
「違うのか!? 俺はてっきり、厳しい家の特殊な事情で男の格好をしなきゃいけない的な事を想像してたのだが」
「違うよ! 何一つ合ってないよ!」
「え、じゃあ、本当に男なのか?」
「そうだよ」
僕は不機嫌気味に答える。
「そっか。それは悪かったな」
言って、男はあははと紛らわすように笑う。
「俺の名前は
僕は、急な自己紹介に少し戸惑う。
これはもしや、友達を作るチャンスなのでは!?
「僕は一ノ瀬涼だよ、こちらこそよろしく」
友達作るのに必死なのを悟らせないため、出来るだけクールに僕は言う。
「近くの席になった縁だ、なんか困った事があったら何でも言ってくれ」
何この人、めっちゃいい奴じゃん。
ヤンキーとか言ってた自分を殴りたい。
「ありがとう。じゃあ、いきなりだけど一ついい?」
そう僕は今、困った事が一つある。
ついさっきから、新崎の後ろで黒いオーラを出した一人の女子生徒が、僕の事を睨んでいた。
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