再会という名の出会い
僕の姿を見た後に、こんなこと言っても信じてもらえないだろうが、僕は男である。
いや、分かっている。
君たちの言いたいことは十二分に分かっている。
こんな可愛い人が男なわけがないって。
男子から女子と間違われて告白されたこともある。
女子からは男と見てもらえなくて、馴れ馴れしくされたりと。
僕も何回か、いっそのこと女の子として生まれたかったと思うことがある。
神様はきっと、僕の性別を間違えて生み出してしまったのだと。
そう思ってしまうほどに、僕は可愛い。
でも同時にそれは、コンプレックスでもある。
それもそうだ。
どんなに見た目が女の子であろうと、心はちゃんとした男なのだから。
しかもそれが思春期となれば尚更。
男に生まれたからには、カッコよくなりたいと思うのは普通のことだろう。
僕も僕なりにカッコよくなろうと努力はしてみた。
けれど、絶望的なほどに似合わなかった。
僕もあんな風に、橘春樹みたいになりたかったと。
あれが、あの人こそが僕の理想だった。
一週間前に出会った、あのイケメン男性。
あれから一度も見かけてないけど、どこの高校かくらい聞いてれば良かった。
そう、僕は高校生なのである。
今日から。
実際、今日は入学式で僕が入学する
ある程度予想はしてたけど……。
周りを見渡すと、僕に向けられた数多の視線が矢のように突き刺さる。
まあ仕方ないか……。
側から見れば、女子が男子の制服着ているように見えるんだから。
そりゃ見るよ。
中学の時に経験してる。
「あの子めっちゃ可愛くない?」
「本当だ! でも男子の制服着てるよ?」
なんて会話も聞こえてくる。
僕は男だよと言い返したいが、そんな勇気が僕にあるはずもなく。
ほんと、この高校の制服が男子でも割と可愛い感じのデザインでよかった。
実際、中学の時の僕は学ランが全く似合ってなかった。
制服のデザインで高校を選んだ面も少しはある。
とりあえず、早く人目につかないところに逃げたい。
ご察しの通り、僕は目立つのがあまり好きではない。
嫌いというよりは苦手と言った方がいい。
その時だった。
みんなの視線が僕から外れたように感じた。
周りを見渡すと、既に僕から注目は外れていて、僕より後ろに視線が向いていた。
釣られるように僕も後ろに振り返る。
そこにいたのは、イケメンだった。
というか、橘春樹だった。
やっぱり何度見てもイケメンだなと見惚れていると同時に、あることに気づく。
橘春樹が女子用の制服を着ていることに。
瞬間、目が合う。
僕の姿をじっくりとみた橘春樹が、驚愕した様子で僕を見る。
そして、
「えっと、一ノ瀬涼だよね?」
「橘春樹だよね?」
互いに震えた声で言う。
「お前って……」
「君って……」
「男……」
「女……」
「「だったのか!?」」
これが、僕たちの再会で。
本当の意味の出会いだったのかもしれない。
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