2-5

「うっ……」

 未那都の中から何かが出ていく感覚を、夕月は掴んだ。そして未那都は倒れ込んでしまった。

「ユヅ、倒せたのか?」

「倒せたよ。彼女はもう襲わないはずだよ」

 少し待つと、未那都は起き上がった。

「ごめんね、迷惑かけて。」

 そう言って、未那都は教室から出ようとする。しかし、それを夕月が止める。

「待ってくれ。さっきまで君にいた『何か』は人を襲わせるものじゃなかった。『負の感情を増幅させる』ものだった。つまり__」

「原因は私にあるってこと?」

「ちょっと違うかな。もし、こうなった原因について心当たりがあるなら聞きたい。」

 夕月は、なるべく未那都を傷つけないように言葉を選んだ。

「確かにこの人達には恨みがあった。話せば長くなるけど、聞く?」

「んー、なら、お願い。」

 未那都はひとつ咳込んだ。

「私が二年一組に恨みがあったのは、彼らに大切な人を殺されたから。」

 未那都の話を要約するとこうだ。

 未那都には二年一組に彼氏・宇野尋斗うのひろとがいた。未那都と尋斗の関係は、二年一組の誰もが知っていた。そして、「年下の彼女と付き合っている」ことが原因で尋斗はいじめに遭う。しかも、それを未那都には言わなかった。未那都に傷ついて欲しくなかったからだ。だから、尋斗はそれを最期に伝え、そして__ビルから飛び降りた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る