2 失いたくないと奪うこと

2-1

「そろそろ、潮時かな。」

彼女__服部未那都はっとりみなとは鏡を見て呟いた。その顔は、怒りの顔だった。どうしても、許せなかったのだ。『彼』の写真を見ても、怒りは収まらなかったのだ。

「あいつらは、絶対に許さない。」


夕月と燐は階段をのぼると、殆ど人影が見えなかった。きっと、この状況を危険だと感じたんだろう。二人は、さらに現場に近づく。すると、同じく現場を見ようとしていた人に声をかけられる。

「近付くだけ無駄だぞ。そこには『近付けない』」

「どういう意味ですか」

「言葉の通りだ」

忠告を受けても、さらに近付いた。すると、言葉の意味が分かった。

「そういうことか……教室の周りに、バリアが張られている」

それが示すことは、「首謀者が超能力者」だということだ。しかし、そのバリアは、あまりにも薄すぎた。人が通れない程度の薄さだ。つまり、首謀者は人さえ入らなかったら構わないということだろうか。しかし、バリアなど感じない燐は、楽々とそれを超える。

「ちょっ、高倉君……!」

夕月も、無効化しようと思えばできるのだ。それを使い、燐をバリアの外へと引き出そうとする。

「これは僕達が関わるべき事件じゃない。教室に戻ろう。」

「いや、俺はそうは思わない。むしろワクワクしちまうんだ。ユヅ、付き合ってくれよ。」

始めてユヅと呼ばれたその時、超能力の事件に付き合わされた。

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