1-5

「どうかした?高倉君」

 燐がずっと黙っていたので、夕月がいよいよ心配した。

「ごめん。何か思っていたのよりも違うなって。俺、超能力を見くびってたみたいだ。」

 壊れたロボットに目を向けて、燐は言う。今までこの実験をさせて、ロボットを壊した者はいなかったのだ。

「ふと思ったんだけど、こんなにもの力を使える麻陽君と、それを無効化する力のある俺がいたら、最強だとか思わないか?」

「いや、そんなことはないと思うけど……」

「でも、俺はそう思う。麻陽君はもっと自信を持ったほうがいいと思うな」

 燐が夕月の肩に手を乗せる。

「じゃあ家まで送って帰るよ。」

「いや、家は結構遠いから。電車使うし」

 夕月は家を出ると、駅まで歩いた。電車に揺られながら、さっきのは何なんだろうとか考えていた。


「ただいまー。」

「おかえり、夕月。遅かったね」

 家に到着すると、出迎えたのは姉の菜月なつきだ。エプロンをつけ、おたまを持っている。きっと夕食を作っている最中だったのだろう。

「ちょっと、用事があってね。母さんは帰ってる?」

「帰ってないよ。今日も帰れないかもって」

 麻陽家には、社会人の姉・菜月と中学三年生の弟・宇月うづき、そして母の四人で暮らしている。父とは、物心がつく前に離婚しており、今は母と菜月の収入で四人暮らしをしている。とは言っても、母は仕事で各地を飛び回っており、あまり家に帰ってこない。夕月は、匂いで今日の夕食がカレーだと分かると、二階へと行った。

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