1-2

 夕月と燐は、人通りの少ない廊下に出る。丁度掃除道具入れの影になっていて、見られる心配はほとんどない。

「こんなところで、要件は何?」

「麻陽君、超能力者だよね?」

 燐は要件を単刀直入に話した。夕月は動揺した。今まで隠していたことが、喋ったことのない人にばれていたからだ。

「昨日の途成町の霊災害を倒したところを見たんだ。あれは間違いなく麻陽君だった。」

「僕以外の可能性は?」

「ない」

 夕月は能力を使って、顔が見えないようにしていたのだ。しかし、それを破られた。訳が分からなかった。そこで出てきた一つの疑惑は、「高倉燐も超能力者ではないか」ということだ。

「もしかして、高倉君『も』超能力者なの?」

「やっぱ麻陽君は超能力者なんだね。で、さっきの質問だけど、俺は超能力者ではない。でも特殊な『力』はある。」

「それは何?」

 燐はひと呼吸おいて、決心したかのように喋る。

「俺は、超能力からの影響を一切受けないんだ。念力も効かないし、能力で姿を隠しても俺には丸見え。そして、霊災害も見えないんだ。見えない何かが、町を壊しているようにしか」

 これには夕月も驚きを隠せなかった。その驚きが冷めないうちに、燐は話を畳み掛ける。

「超能力者の麻陽君に、頼みがあるんだ。それは……」

 ここでチャイムが鳴った。タイミングが悪い。燐は、次の休み時間にも話す約束を取り付けると、二人で急いで着席した。

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