第3話 事の発端~スノボへのお誘い~

あれから4年後の、今。

真鍋君は宣言通り、チーム内では1番じゃないかと思うほどの、貴重な戦力になっている。

今では、『チームリーダー』である私が彼を注意することも、ほとんど無い。

それどころか、頼もしい右腕とも言える存在だ。


「澄香さん!」


馴れ馴れしいのは、変わらずだけど。


「なに?」

「澄香さんも、一緒に行きましょうよ!」

「・・・・何の話?」

見れば、チームメンバーの視線が、一斉に私へと注がれている。


えっ、なに?

私、なにかした?!


「今度みんなで、スノボ行こうって。ついでに温泉も。澄香さんも、行きますよね!」


あ~・・・・そういう事。


チームメンバーがやけに楽しそうに話していると思ったら。

まぁ、仲がいいのは、いい事だけど。

多分、そこに私はいない方がいいんじゃないかな。

だから、みんな緊張した顔で私を見ているんだと思うし。

これきっと、『断ってくれ』って言うことよね?

だいたい、普段から、仕事以外の付き合いを一切しない私が、そんな場に行く訳が・・・・


そう思って口を開きかけた時。


「行きましょうよ、大竹さん」

「そうですよ、大竹さん。行きましょうよ!偶にはいいじゃないですか、仕事以外でみんなで出かけるのも」


チームメンバーが次々と私を誘い始めた。


え?ウソでしょ?

なんでそうなるの?


「そーゆーことなんで」


いつの間にかすぐ側に来ていた真鍋君が、いたずらっ子のような笑顔で私を見る。


「行きますよね?澄香さん」

「・・・・そうね」


とたんに、チームメンバーが騒ぎ出す。

その様子を見ながら、真鍋君が言った。


「みんな、澄香さんのこともっと知りたいって、思ってたんですよ、ずっと」

「え?」

「俺には負けますけどね」


ニッと白い歯を見せると、真鍋くんは再び、チームメンバーの元に戻って、賑やかな輪の中心となる。


「私、スノボなんてできないんだけど」


私の小さな呟きが彼らの元に届くことは無かった。

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