血塗られた魂 005
あの晩から2日が経ち体もだいぶ回復したので学校に登校した。
友達が少ない俺は窓側の席の特権を有意義に使うため、校庭に季節の変わり目を表す青葉が生え始めた桜の木を眺めていた。
「おい、近衛って奴はお前か?」
風景に浸っていると男子生徒が話しかけてきた。
「何のようですか?」
「違うクラスのやつがお前のこと呼んでるぞ」
はぁ?俺を呼ぶなんて亡霊か?それとも、
「どこかと思えばあなた隣のクラスにいたのね」
「お前は………」
僕を呼んでいたのはあの時救った黒髪美少女だ。
「話したいことがあって来たんだけど、2日前の件で」
「ちょっと待て。ここでそういう話はよしたほうが良い」
目立たなかった僕が美少女に呼ばれ周りから注目されていた。
この状態でオカルト系の話をするとこの子と僕が周りから厨二病だと思われかねない。
一旦その場を離れ、下校中に一緒に帰りながら聞くという約束をした。
だが、これって焦ってあまり考えていなかったんだが、女子と一緒に帰るって何かのイベントみたいなことを僕が約束したと考えると少し恥ずかしいところがある。
とりあえず下校時間になり、彼女と待ち合わせをした下駄箱に向かった。
終礼が終わって即座に向かったが、すでに彼女は下駄箱で待っていた。
「帰りながら話しましょう」
色々な店がある大通りの下校道。
夕焼けの中、
「私をあいつから救ってくれて本当に感謝してるわ」
「あいつが取り憑き出したのはいつだったんだ?」
「2年前からよ。あいつが現れたのは」
彼女は全てを話してくれた。
2年前のこと。
まだ彼女が中学2年生だった時にテニス部の活動で疲れていたらしく、家に帰って仮眠を取ったらしい。
それからたった1時間のことだった。
寝てから少しの間、何故か真っ暗な部屋に無意識に立っていた。
寝ぼけて誰かの部屋に入ったと思い、真っ暗な部屋の灯りをつけた。
そこには恐ろしい光景があった。
目の前には真っ赤なベッド。
そしてその上に倒れる傷だらけの両親の姿。
そこから覚えているのはどこかの山奥に籠り体を震わせてからだった。
その日から自分の中にはもう一人の人格がいると分かり、例の人格が現れたら山に籠っていたらしい。
あの獣の死体はあいつが全てやったということだ。
そうして家族に迷惑をかけないよう一人で生活しているという。
「それから家族の方とは連絡してないのか?」
「ポケットにあった携帯を通じて家出先の住居や入学の手続きをしてもらったわ」
その出来事は警察に事件性を疑われたが、彼女の両親によりそう言った問題は解消されたという。
「どうやって事件性は無いってなったんだ?」
「うちのお父さん警察署署長だから」
あぁ〜〜なるほどと納得はしたが、親が警察署長って凄いな〜。
最近幽霊と相手しているせいかこんなことでは驚かなくなった自分が怖い。
「そこら辺の問題は良いとしてそれなら中2から学校に行ってないってことか?」
「ええ」
「なら僕が教えようか。学校に行ってなかった間の分を」
「いえ、まだあなたに救ってもらった恩を返してもいないのに」
「恩とか考えなくていいから。放課後にでも教えてあげるよ」
紺輩が申し訳なさそうにコクリと頷く。
「私も聞いてもいいかしら」
「ああ。答えれるものなら何でもいいよ」
「あの夜に見たあなたの姿は何だったの?獣の耳とかしっぽが生えてたけど………」
あの晩、姿を変えた時に見られていたのか!?
霊を取り除いた後、意識失くしたのを確認したから見られていないと思っていたんだが、
仕方がない言うしかないか。
「色々あってあの時取り憑かれた霊の力を使ったんだ」
「近衛さんも霊に取り憑かれていたの?」
「少し前事故で霊に取り憑かれたんだ」
僕があの事故を忘れることはない。
忘れてはいけない過去なのだから………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます