血塗られた魂 004
「何をぬかしておる」
少女は首を傾げる。
「見ておけよ」
少年の体から決して人間のものではない猫のような耳や爪が生えてきた。
「元々多少の霊力があるのは承知の上じゃったが、まさか化け猫を憑依させていたとは面白い奴じゃ。じゃが、その程度の霊を憑依させたぐらいでは我には到底及ばない」
「舐め切っててもいいが、こっちは本気でいかせてもらうぞ」
「良い良い。ハンデでお前からきても良いぞ」と舐め切った提案をされる。
さすが江戸幕府に仕えていた処刑人だ。器が大きい。
「ああ、そうさせてもらうよ」
奴は剣を、僕は爪を構え戦闘態勢に入る。そして準備ができ睨み合う。
言われた通り、こちらが先に攻撃を仕掛けるが、躱された。
そして向こうが剣を抜く。
尋常ではない速さで互いに一撃で攻撃の動作を済まし……
瞬く間に勝負がついた。
「ぐはぁ……!」
少女が倒れ込む。
「なぜじゃ……!なぜ我が膝をついておるのじゃ!?」
表面的な傷が全くないはずなのに自分がやられたことに混乱しているようだ。
「お主……憑依させた霊……ただの化け猫ではなかろう……」
「だからなんだ?お前の霊体はさっきの一撃で保つのも限界なはずだ。さっさと消えるんだな」
少女から邪悪な気配が無くなり、体が倒れ込んだ。
意識がないようで揺さぶっても起きない。
除霊したのはいいが、この子を一体どうすれば。
一旦僕の家に連れ帰るか?
誤解されそうだが、決して下心があって連れ帰るのではない。
変態扱いはごめんだ。
いくら興味があってクラスメイトの女子の名前を入学早々記憶する奴だがそんな気はない。
少女をおんぶし、自分の家に帰った。
「うっ……、ここは……どこ?」
「目覚めたか。そこに朝ごはん置いといたから食べてけよ」
「え……嘘でしょ。あなた何かしてないでしょうね?」
「何もして……」
「したのね。早く捕まりなさい」
まだ何も言ってないのに即逮捕を命じられるとは。
「この僕に君を襲うなんて度胸は持ち合わせてないよ」
弁解するが、少女はまだ疑いの目を向ける。
「まぁいいわ。それは置いといて、あなたなぜまだ死んでないの?」
「死にかけたけどこの通り大丈夫だ」と見栄を張って元気に振る舞うが、戦いで負った痛みがまだ響く。
「君に取り憑いていた霊はもういないよ」
「何を言ってるの?だって……」
信じれないようだったが、時計を見て唖然とする。
「今ってまだ3時なの?まだあいつが目を覚ましてる時間帯なのに」
この口振りから察するに深夜のみあの悪霊に人格が変わっていたらしい。
「何故あんな悪霊が君に取り憑いていたんだ?」
「あいつは私の先祖でたまたま自分と容姿が似ていた私に取り憑いたらしいの。昔は死刑執行人という立場を利用して、無罪の一般人を試し斬りするような奴だったらしいわ」
「そんな奴に取り憑かれていたとは災難だったな」
毎日寝てる間に快楽として人を殺すような奴と入れ替わっていたというのは見えないところで身の危険を感じながら過ごしていたのだろう。
「あなたのおかげで学校に行ける。いつかこの恩は返すわ」
「恩なんて呼べることはしてないさ。何も考えなくていいよ」
僕は目の前にたまたま通りかかった1人の少女を助けただけだ。
「私に恩を一生売るつもり?それはごめんよ」
朝食を食べ終わり立ち上がると少女は素早く出る支度を終わらせていく。
「私の名前は紺輩燐。あなたと同じ学年でしょ。2組にいるからまた会いにいくわ」
こうして1人の女の子を救えたが、あの子に心配をかけないよう体が疲労していることを隠していたため、1人になった途端気が抜けて部屋に倒れ込んだ。
筋肉痛と打撲が痛すぎる。
明日は学校行けそうにないな。
部屋の天井を見つめ、疲労感と達成感が入り混じる中、目を閉じた。
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