第3章 策謀

第19話 魔王城侵攻作戦


 魔王をはじめとする魔物は基本的には食物を摂取しなくても生きていける。


 ただ、活動するにはエネルギーが必要となる。


 そのエネルギー源が人やエルフなどの高等生物の負の感情。


 特に命を絶たれる時の断末魔だんまつまの恐怖が最も高いエネルギーとなる。


 それゆえに魔物は人や亜人を襲う。


 魔王は絶大な魔力を有している代わりに魔王城からは出られない。


 それゆえ魔物に恐怖を吸わせて、その魔物を吸収し力を得る。


 強力な魔物を創造すると自身の力は弱くなるが、その魔物がエネルギーを運んでくればその分使用したエネルギーの元が採れる。


 ただ、魔王軍の中でも軍師ネルピー、将軍ネルミと第1軍から第4軍までの各軍団の大将は相当な魔力を割いて創造したため失うわけにはいかないの。


 低級魔族であればすぐにでも生み出せるが数を作るとすればやはり魔力を失ってしまう。


 論理的には無限に増殖しうる魔族もそのような事情があり実際には無限に出現しているわけではない。



 魔王城を巡っては、数年前から魔王城侵攻作戦が開始されている。


 東から2万の軍勢が、西から1万5千の軍勢が魔王城まであと少しといった距離にまで迫っている。


 ただ、それも魔王にとっては取るに足らないことだった。


 魔王軍が守り切れば、それで良し。


 守り切れなければ魔王城で全て殲滅し逆にその絶望を力に変換すればよい。


 しかし、おかしいのは人間側の動きだ。


 突破できるような隙をわざと作ってもそこで踏みとどまる。


 まるで時間稼ぎをしているかのような動きだ。


 たしかに、人間側には勇者という希望がある。


 この大軍は勇者の出現に合わせて魔王軍を足止めするために練られたものであるのか。


 人間側の将軍にラナクスという名前の者がいたことを思い出す。


 魔王が唯一覚えている人間の名前。


 「つまらないことをするな」そういう魔王の口元は少しにやけていた。

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