第13話 牙ラビット


 しばらく歩くとウサギがぴょんぴょんと飛んでいる。


 ただ、よく見ると鋭い牙を生やしている牙ラビットというモンスターだ。


 ガイアの草原にいる最もポピュラーなモンスターと言えるだろう。


 サナティ達が周りを囲み逃げないようにしてクリス・マージの前に追い込む。


 モンスターとは言え、かわいい姿をしているウサギを攻撃しあぐねていると牙ラビットの方から攻撃を仕掛けてくる。


 左手の甲に傷を受ける。痛い。


 クリス・マージは左手にできた傷を見るとプッチンと切れて右手に持ったロッドで思い切り牙ラビットを殴る。


 クリティカルヒットだった。


 その一撃で牙ラビットは絶命しクリス・マージに経験値が入っていく。


 「おおー」さすが【神の代理人】と言うような歓声が3人から上がる。


 クリス・マージはすこし恥ずかしく照れていた。




 その日は牙ラビットを8匹、ハチを3匹倒して修道院に帰ってきた。


 ラビットは貴重な動物性たんぱく質となるしハチは毒液を加工することによって傷薬となる。


 クリス・マージは捕ってきた牙ラビットをいつも身の回りの世話をしてくれる女の子アイと戦災孤児たちに振舞ってあげた。


 「クリス・マージ様いいんですか?」アイは遠慮がちに牙ラビットを見ている。


 「食べて!いつも食べれてないでしょ?」修道院の経営は苦しかった。


 クリス・マージは特別に肉が提供されているがほとんどの者は野草の雑炊と固いパンのみであった。


 アイは15歳くらいだろうか、ちょうどクリス・マージと同じ年なのだろう。


 たまには冗談を言ってみたいがアイはクリス・マージのことを神様とでも思っているのかじゃれあえるような雰囲気でもない。


 アイとまだ8歳くらいの子どもだろうかユン・トーカ・シャムはクリス・マージに感謝をこめて手を合わせてからウサギの肉を食べる。


 幸せそうな笑顔だ。


 アイは涙すら浮かべている。


 もしかして、私いいことしているのかな?千園(=クリス・マージ)はそんな風に思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る