第11話 魔王城・王宮


 4人が召喚された場所からはかなり離れているガイア中心部。


 そこに魔王城がある。


 魔王は神と対の存在としての魔ではなく、その魔によって創造された魔の子というのが正確な表現だろう。


 そして、魔王からは無限ともいえる魔物が生まれておりそれがガイアに住む人々やエルフなどの亜人を苦しめている。



 魔王城は1層から6層まであり6層の最上階に魔王ネフィルがいる。


 同じ6層には軍師ネルピーが5層には将軍ネイナムが居を構えている。


 ネイナムの指揮下には第1軍から第4軍までいるが、現在はそれぞ交戦中である。


 「父上」軍師ネルピーが深くこうべを垂れて魔王ネフィルのことを呼ぶ。


 ネフィルはそれには反応せず何か書物を読んでいるようだ。


 「父上」再度ネイナムが声をかける。


 「なんだネルピー」面倒くさそうにネフィルが言葉を返す。


 「勇者が召喚されたとの情報が入ってきております」


 「勇者か・・・」その言葉を聞いてもネフィルはあまり関心を示さないようであった。


 「こちらから先手を打つべきではないかと」


 「先手と言っても俺はこの城からは出ることはできない、今動かせる部隊はあるのか?」


 「ネマの部隊が動かせるかと」


 「第2軍か」


 「はい、ただ勇者の位置はまだ分かりませぬ」


 「細かい作戦はネルピーに任せる、俺は試作品も作りたいからな」


 「かしこまりました、父上」


 そう言うと軍師ネルピーは魔王の部屋を後にした。



 神と魔の争いは人・亜人連合対魔族という形でこの世界ができてからずっと争いが続いている。


 魔族の中心が魔王城であるならば人の国の中心は王都であった。


 王都には10万人の人々が住み、王宮を始めエルフ族・ドワーフ族などの亜人の領事館、大規模な商業ギルド・冒険者ギルドの本部が置かれ高級商店街や住宅街、工房など各種施設も充実している。



 王宮には女王エリス3世をはじめとした王族と貴族・軍の幹部が集まっていた。


 まずは軍の筆頭軍師であるリグナから各方面の情報が入ってくる。


 ガイアの中心部にある魔王城を東と西から連合軍が攻めている状況である。


 戦況は一進一退であり両者ともに決定打がないまま数年が経過しているところであった。


 「それより、例の件はどうなっている?」


 女王の言葉に集まった一同に緊張感が走る。


 例の件、勇者のことである。


 勇者について人間側では複雑な受け入れ方である。


 最終戦争ハルマゲドンを行うメリットがあるのか、勝てなかった場合最悪の事態になるのではないか、もし勇者が魔王に勝てば英雄としてこの世界を統治することになるのか?


 王家、貴族、軍部、ギルド、民衆、教会、それぞれがそれぞれの立場で勇者を捉えている。


 ただ、神の使者とも言える勇者に対し表面上は人類側は全面的に協力をする立場にはある。


 しかし、現在勇者の居場所はおろか詳しい情報も入ってきてはいない。


 神託の巫女ラージャが神の意志を聞き、勇者が召喚されたということだけが王都の中に光の速さで伝わっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る