第8話 クリスタル・ゲージ


 佐藤千園(=クリス・マージ)が召喚された修道院から遠く離れた南の半島。


 そこには加藤悠が召喚されていた。


 薄暗い洞穴


 そこには100人以上の人間がいる。


 ただ、その人たちはまともな生業なりわいを営んでいる人たちではなさそうだ。


 簡易的な鎧とシミターで武装した盗賊団。


 悠は目が覚めるとベッドの上で寝ていた。


 周りを見渡すとベッドには18歳くらいと見られる女性3人ほどと一緒に寝ていた。


 「!!!!」悠は驚いて顔が真っ赤になったり真っ青になったりしていた。


 「ゲージ」1人の女性が甘い声を出す。


 「俺は・・・」加藤悠だと言いたかったが何故か声にならない。


 その間にも半裸の女性たちが悠(=クリスタル・ゲージ)にまとわりつく。


 「トイレ行ってきます!」そう言って悠が寝室から逃げるように出ていく。


 残された女性たちはきょとんとした表情でお互いの顔を見合わせる。




 「坊ちゃん、どうしたんです?」トイレで鉢合わせた若頭のザボウが声をかける。


 「あ、俺は、クリスタル・ゲージ」召喚の時に呼ばれた名前を口に出す。


 「そりゃ分かってますぜ、坊ちゃんが生まれた時から俺は一緒にいるじゃないですか」


 「あ、そうか」悠は考えた。


 どうやらここは異世界?らしい。そして、どうみてもここにいる人たちはカタギじゃない。でも、その人たちには悪く思われてはいないみたいだ。むしろ大切にされている?


 自分の立場を見極めたほうがいいんだろう。自分を召喚した意思とやらは多分信頼して良いのだから。



 アジトの中を歩いているうちにひと際大きな部屋に突き当たった。


 おそらくボスの部屋なのだろう。


 ノックをする。


 返事がない。


 開けてみると40代に見える大男が色気の塊のような女性を抱きしめていた。


 「なんだ?」


 「なーに?ゲージ、混ざりたいの?」


 「あ、いや、失礼しました」



 しょうがなく自分の部屋に戻る。


 彼女たち?なのだろうか、その3人から話を聞くのが一番早いと思ったからだ。

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