第6話 凛の家


 凛の家は荒れていた。


 両親と凛と弟の4人家族。


 離婚はしていないものの夫婦仲は冷え切っていて母親の夫に対する不満のはけ口が凛と弟に向いていた。


 凛も剣道の有段者だが母親は元ヤンということもあり喧嘩なれをしている。


 また凛はどうにも母親には反抗できない。


 物心つく前から母親の機嫌が悪くなる度にネチネチと暴力を振るわれていた。


 家の前で海斗と別れてから家に入るが母親はいない。遊びに行っているのだろう。


 「真人まさと何か食べる?」弟の部屋の方に呼びかける。


 「あれば食べる」


 それを聞いて凛が炊飯器からご飯を取り出しておにぎりを作る。


 冷蔵庫にあったいかの塩辛を入れてみた。


 真人が美味しそうに食べるので凛は半分だけもらって食べてみた。



 食べ終わるとそのまま自分の部屋に入る。


 海斗から借りたハンドタオルを抱きしめる。


 「洗って返さなきゃ、柔軟剤とかいれたらいい匂いするかな?」そう呟きながらハンドタオルを顔に近づける。


 「姉ちゃん何してるの?」


 「真人!!!」覗いてる真人を思い切り殴って部屋から追い出すと、ちょっと手が付けられなかった勉強道具を取り出してみた。高校の勉強は中学の頃よりもだいぶ難しく感じた。


 ・・・人前で泣くなんて、びっくりさせちゃったかな、海斗君


 初日にクラス委員4人で撮った写真を眺める。


 海斗の顔だけをズームして


 あ、ズームしすぎて粗くなっちゃった。


 そんな工夫をしながらようやく観賞用の海斗(フレーム付き)が出来上がる。


 ・・・あ、勉強勉強


 少し気分が救われたような気持ちになり勉強がはかどった。

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