第4話 体力テスト


 4月5日火曜日


 今日もいい天気だった。


 高校の授業は初日となるが各科目の担当は最初に軽く挨拶をしただけで授業を始めてしまう。


 春休みに自由を満喫した生徒にとっては辛い時間ではあった。


 それでもA組の生徒は優等生が揃っていて居眠りをしている生徒は1人もいなかった。


 4時間目に担任の小岩先生の授業があった。


 小岩先生は現代文を担当しているが授業の前にクラス委員を4人呼んで昨日決定したクラスの役職を発表した。


 役職については事前にグループラインが流れており辞退する者はおらずすんなりと決まった。


 グループラインの発起人は加藤悠だった。


 

 お昼休みの時間になるとお弁当を広げて食べたり食堂に食べに行ったりクラスメートは散らばっていった。


 悠のお弁当は千園が作っていた。


 悠の家が貧しいこともあったし、2人にとってはそれは当たり前であった。


 クラスメートからは既に公認カップルのような雰囲気が漂っている。


 悠は恥ずかしがっているが、それでもガツガツとお弁当を食べていく。


 海斗と凛は食堂に食べに行く。


 海斗はかつ丼を頼んで、凛はきつねうどんにした。


 なんとなく2組のカップルになりつつあるが4人の中でははっきりとした恋人というわけではなかった。



 午後は体育の授業だった。


 女子はA組の教室で着替えて男子は体育館準備室で着替える。


 男女ともに体力テストだった。


 握力・上体起こし・体前屈・反復横跳び・持久走・シャトルラン・50メートル走・立ち幅跳び・ハンドボール投げの9種目がある。


 それぞれ点数が最低の1点から10点まで90点満点だ。


 男子は盛り上がっていた。


 海斗と悠が8種目まで終わって共に9点が1種目で残り全て10点というハイレベルな争いで他のクラスメートを大きく引き離していた。


 最後の持久走のスタートラインに立っている時には全てを終えた女子生徒たちも2人の争いに注目していた。


 なお、凛は71点で女子2クラスの中で4位だった。


 千園は、生まれつき心臓が悪く激しい運動ができない。


 体力テストについても辞退したかったが体育教師に必ずやりなさいと強い口調で言われ、嫌々にやっていた。


 反復横跳びやシャトルランなどをやる時はほんとにゆっくりとした動きになっていた。


 強面こわもての体育教師に怒鳴られ少し本気を出したが、それだけでもう心臓が止まるのではないかというくらい気持ち悪くなった。


 真っ青な顔をしている千園に凛が駆け寄り「大丈夫?」と声をかける。



 男子の応援をし始めた時には少し千園の体調も戻っているようではあったが、顔色はまだ悪かった。



 先生の笛の合図で2クラスの男子40名が一斉に走り出す。



 最初に悠が飛び出す。


 後続を徐々に引き離すが1人だけ引き離されないで悠の後ろにぴたりとくっついて走る。


 海斗だ。


 大柄な海斗の影を感じながらさらに悠がスピードを上げる。サッカー部が帰宅部に負けたくはなかった。


 スピードを上げられても海斗はゆうゆうと着いていっているように見える。


 凛も千園もどっちを応援していいのか分からず見守る。


 女子生徒の声援は6:4くらいで海斗の方を応援しているようにも思える。


 残り200メートルとなり、悠が最後の力を振り絞る。


 海斗もさすがにきつそうに見える。


 残り20メートル、2人が並ぶと最後は海斗がわずかに前に出てゴールした。


 なんとなく体育祭のように盛り上がったが海斗も悠も持久走も10点で合計89点で同点の首位だった。

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