第3話 大宮の2人


 千園の家は大宮駅から近いタワーマンションだ。


 21階に住んでいる。


 悠がタワーマンションの入り口までは送ってくれた。


 

 「千園、何時だと思っているの?」母親の厳しい口調が待っていた。


 「遊んでいたわけじゃないよ、クラス委員の仕事」


 「だからって入学式の日にこんなに遅くなるの?」


 「ママだって遅くなる時あるでしょ」


 「それとこれとは別です」


 「とにかくシャワー浴びたいけどいい?」


 母親はそれでもまだなにか言いたそうだったがキッチンに引っ込んだ。


 千園は制服を脱ぐと浴室へ入っていく。


 体を洗いながらもクラスの人の名前やクラス委員のことを考える。


 「高橋君か、大きかったなあ、でも、凛ちゃんとは帰りも一緒だしお似合いなのかも?」


 そんなことを考えていた。



 悠の家は千園の家から300メートルくらい離れた木造の古いアパートだ、そこに母親と2人で暮らしている。


 今日は母親はまだ仕事なのか帰ってこない。


 買い置きしてあるカップ麺を無雑作に選びお湯を沸かす。


 お湯を沸かしながらも洗濯機に洗い物を放り込んで洗濯を始める。


 もう9時で周りの部屋に聞こえてしまわないかちょっと不安に思ったが隣の部屋もよく夜の10時になっても洗濯機を回しているので許されるだろうと考えていた。


 悠は小学校の時から千園のことが好きだった。


 内部進学で高等部に行くことは確実だったが、成績優秀な千園がA組に上がるであろうことは予想されたので、時間の許す限り勉強をした。


 まさかクラス委員にまでなるとは思ってなかったが。


 「千園、幼馴染なんて恋愛対象にはならないかな・・」


 悠は悶々もんもんとしていた。

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