第30話「4ゅう了」

「本当なら赤鬼アカギ様は学園生活を楽しまれているはずでしたのに……」


 ドラキュラの鍵を使い、外へ出ると、満天の星空に真っ赤な月が煌々と輝く。

 

 死ぬには良い夜だ。

 そんなことを思う僕の背中に瑠璃の申し訳なさそうな声が投げかけられる。


「ん~、まぁ、仕方ないね。また瑠璃に魔眼で記憶を忘れて学校に戻るのもいいけど、こんな事態がまた起きないとも限らないし。僕が最初から真祖である記憶と能力を持っていたら、皆も……。結局、僕は誰かの犠牲の上に立つ宿命にあるようだ」


 なんとか瑠璃に向かって笑いかけられていただろうか?

 ぎこちない笑顔になっているかもしれないし、無意識に泣いていたかもしれない。


「……そんな、ことないです。私も真赭も赤鬼さまに仕えられて幸せでした。あ、あと、それと」


 瑠璃は何やらモジモジとしている。


「……その学校での告白は嬉しかったです。赤城くんの方だったとしても」


「あ~」


 あ~~~~~~~~~~~~~っ!!

 やっばい!! そうだよね!!

 赤城トシユキのときに瑠璃に告白してるんだった。

 しかも、あれって僕の本心よ! 彼女の父親に負い目があったから、今までこの想いに蓋をしていたけど、そのことも忘れているから心の赴くままに告白しちゃっていたっ!!


 ど、どうする? どうする? このまま雰囲気でうやむやにして逃げるのか?

 それとも……。


 記憶を無くしていた代償は、シンソゲームより重大そうだ。


「今夜は月がキレイだな」


 僕は空を見上げて、思わず呟くのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シンソゲーム ~吸血鬼の真祖を殺すデスゲームに巻き込まれた~ タカナシ @takanashi30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ