第16話「4ん頼」
生き残ったハンターは右手はバキバキに折れ、使い物にならなくなっているし、そもそも心も折れており、特に拘束もせずに話を聞く事となった。
「正直に答えてもらいたんだけど、ドラキュラハンターVは他にどんな罠を仕掛けているの? それから、素顔はどんなで、今はどこにいるの?」
Vは4回死んでも生きていた相手を案内すると言っていた。つまりすぐに会える位置にいるということだ。
もし、先にその場所が分かれば、4回誰かが死ぬような目に合わなくても、ここから出られるはずなんだ。
「し、知らない。本当に知らないんだ。Vは俺たちハンターのところに唐突に現れて、協力を申し出たんだ。そのときから面を被った変なヤツだった。だけど、実力はホンモノで、何体もの吸血鬼をあいつは殺していった。
俺たちがあいつを信じて協力するのに、そう時は掛からなかった。それであいつが、吸血鬼を捕獲したいっていうから、俺らも手伝った。
最初は無名な吸血鬼を捕獲してこうしたデスゲーム? ってのに参加させてそこで殺してみせた。何回か繰り返し、俺らもノウハウを覚えたところでお前らだ。
2つ名のある脅威度が高い吸血鬼。
お前は知らないが、百目木兄妹、古老、エレメンタラー、ゲーマー、バットが選ばれた。俺らに捕獲出来るのか半信半疑だったが、Vの力は凄まじく簡単に捕まえてたよ。
あれ? そういえば、他の吸血鬼は全部Vが率先して捕まえたのに、あの男のときだけは――」
そのとき、杭がハンターの胸へと突き刺さる。
「がはっ!! な、なんで……。やはり、裏切った、の、か……」
その杭はモニターから射出されたもの。かつて鋼森を貫いたものと同じだ。
「いやいや~、真相に迫ろうとするのはご法度ですよ。そういう方には制裁を科さないと。それに、あの部屋から出る為にはハンターか吸血鬼、どちらかが死なないとダメですからね。私はきちんとルールは守りたいタイプの主催ですので」
「なんで、そんなことで簡単に殺せるんだ! 仲間だったんだろ!!」
「仲間ですか? ふむ。そうですね。彼は今では仲間と呼んであげてもいいかもしれないですね」
「なら、なんでっ!!」
「ふふふっ。死ぬことで仲間になることもあるんですよ。という答えではいかがですか」
「ふざけるなっ!!」
いますぐにあのモニターを叩き割ってやりたかったけど、僕にそんな力はない。
いや、諦めるかっ!
僕はビリヤードの玉を掴むと、全力でモニターに投げつけた。
キレイに画面に当たり、ひび割れる。
「随分お怒りのようですね。これはいけない。きっと疲労がいけないのでしょう。百目木ルリさんもあの傷では休んだほうが良いでしょう。という訳で2Fにリラクゼーションルームをご用意してありますので、是非お使いください。それから2Fには特別に資料室もございますので、良ければご見学ください。
ああ、それと、リラクゼーションルームでは私は一切の罠を仕掛けません。本日一日はそこでゆったりとお過ごしください。ですが、もし、そこで何かしら死ぬような異様な事態になりましたら、きちんと死亡回数に含めることをお約束いたします。それではこれで」
モニターの映像が消える。
いったいVは急になんの目的で?
それにハンターが言いかけていたことは……。もしかして、僕らの中にドラキュラハンターVと通じているものがいる?
いやいや、そんなはず。ない。よね。
ぐるぐると思考の渦に飲み込まれていると、そこでルリと三木谷さんが戻って来る。
ルリは制服のシャツが血にまみれている。
「まっ、命に別状はないっしょ。ただ、少し休ませた方がいいのは事実ね」
ルリは精一杯の笑顔を僕らに見せるけれど、明らかに無理しているようだ。
ハッキリ言ってVの言う通りにするのは気が引けるけど、ルリを休ませたいし仕方ないのか。
しぶしぶではあるが、僕らは遊戯室を後にして2Fへと上がることにした。
エレベーターは先の一件で壊れているため、自然と階段による移動となった。
ルリはマスオさんが例によってお姫様抱っこで抱えながら、階段を登り、僕らもそれについて行く。
「……ん? あれ? 石垣がいない?」
あの部屋から出てからいつの間にか姿が見えなかった石垣。先に階段を登って2Fへ行ったのかもしれないけれど、なんともいえない不安を感じた僕は、鋼森に声をかけて1Fを探しに行く。
「赤城、別にほっておいていいんじゃね?」
「う~ん、そうなんだけど、なんか気になって」
ハンターの人の話ではもしかしたらVの協力者がいるかもしれないし、誰か一人で行動するのは……。
さて、1Fはどこから探そう。
遊戯室は死体があるんだよね。
できれば、避けたい。
そんな思いから自然とまずは朝食を取った場所へと足が向かう。
するとバイキングとなっていた場所にはシャッターが降ろされ、もう食事は出来ないようになっていた。
そして、そのシャッターの前には石垣が。
ドンッ!!
いきなりの音に僕も鋼森も思わず身を竦める。
な、なんだ。いきなり、なんの音だ。
「おいおい。いきなりシャッター殴って癇癪か?」
鋼森の声でこちらに気づいた石垣は、明らかに不機嫌そうな表情を見せるが、すぐに人を喰ったような笑顔をまるで無理矢理に表情筋を動かして張り付けると、
「なんじゃ、腹でも減ったのか? 残念ながら、もう食べれないようじゃぞ」
「石垣さんは何をしに?」
「この歳になるとすぐに喉が渇いてのぉ。少し水分を貰おうかと思ったのじゃがこのありさまよ。諦めて、2Fへ行くことにしようと思ったところじゃが、ついつい癇癪を起してしまってのぉ。ま、ドラキュラハンターVなんていうのに迷惑をかけたところで、どうでもいいじゃろ」
そう言いながら、僕らの側へと近づく。
「そうじゃ、そうじゃ、先ほどのハンターの男、興味深いことを言っておったのぉ。あそこでVが殺したということは、もしかするとワシらの中にVもしくはその協力者がいるとワシは睨んでおる」
それは確かに僕も思ったことだ。
「な、マジかよ! じゃあ、誰が協力者とかっていうやつなんだ?」
「ワシは百目木兄妹のマスオじゃと考えているんじゃよ。気づいておるかのぉ。奴だけ死亡回数が1回じゃ」
確かに、さっきの遊戯室で僕の回数は2回になっていた。
石垣もエレベーターと遊戯室で2回に。
「でも、それを言うなら三木谷さんも1回だけど……、そうか、あの男って言っていたもんね」
「うむ、その通りじゃ。エレメンタラーが性別を偽っているのならば別じゃが、昔から女だと聞いておる」
「おう! 俺様も裸を見たから間違いないぜ!!」
ああ、そういえば、それで首が回転してたね。
「でも、マスオさんは何度も僕らを助けてくれた。それにルリのお兄さんがそんな妹を危険に晒すことをする訳がない!」
「そうだぜ! 俺様も助けてくれた旦那がそんなことするとは思えねぇ!」
命を直接助けられている鋼森も賛同してくれる。
「それは分からんぞ。順番が違うのかもしれん。妹が先に捕まり、それを助ける為に協力しているとしたらどうだ? もしかしたら捕まえるときだけの協力者かもしれぬ。だが、Vが何者か知るには協力者を見つける必要があるじゃろ?」
そう言われればそうだけど……。
「よっしゃ! そんなら俺様があとでマスオの旦那に聞いてくるぜ。んで、潔白を証明してやらぁ!! ほら、行くぞ赤城」
「ほっほっ。それは頼もしいのぉ」
僕ら三人は連れ立って2Fへの階段へと向かった。
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