第10話最強のアサシンになりたくて!

 ボスからの緊急任務が課せられた後、俺とミアはすぐさま準備をする。


 今回の任務は長旅になるだろう。バックに必要な物を詰めてないとな。


 


「ゆう、、、何入れてるの、、?」


 


「ふっ、秘密兵器さ!」


 


 ミアが驚いた顔で聞いてきた。どうしたかと思えばそんなことか。まぁ無理も無い。バックにあまりにも詰め込み過ぎたからな。


 


「いずれ見せてやるさ」


 


 ミアは大きな溜息を吐きながら「ガラクタだったら容赦しないから」と小言を言われた。


 


 ククッ今に見てろよ


 


 


 


 


 


 準備を終えた俺達はデスファング直属の馬車に乗った。


 余り豪華でもなく厳かな雰囲気があり、最初は圧迫感があったが、次第に心安らいでいった。


 


 ちょっぴりデスファングを見直した。


 


 そう思っていると御者が今回の任務を詳細に話しだした。


 


「今回あなた方がして貰うのはルーベル様の救出です。」


 


「救出?」


 


 予想外の任務でミアが素っ頓狂すっとんきょうな声で首を傾げながら言った。まぁ俺も任務が救出で少し驚いたけどそこは重要じゃない。ミアも気づいたみたいだ。


 


 救出するのが“あの”ルーベル様って事だ。


 


「ルーベル様って“あの”ルーベル様って事!?」


 


「はい。フリューゲルス・ルーベル様で御座います。」


 フリューゲルス・ルーベル


 それはこの国では知らない人なんていない位有名な名家のフリューゲルス家の超が10個つくレベルの優秀な長女である。代々国王に仕えており、爵位は公爵の更に上の大公。貴族の中でも今では一際異彩を放っているが、最初は裕福の2文字も無い程貧しかった。ルーベル様の先代の方は平民出身で他の貴族達からは奇異な目で見られていたと言う。

 そんなザ・BINBOUが知らぬ者などいない名家になったかというと。フリューゲルスル家の領地の山に貴重な魔石が大量に眠っていたからだ。

 そこからあれやこれやと掘って、売ってその金で平民のため数多く製品を創っていたらいつの間にか誰もが羨む名家になったのだ。


「フリューゲルスル家がどうして私達に助けを?」


「単刀直入に申し上げますと、誘拐されました。」


「「え?」」


 まじかよ名家のお嬢様が誘拐されたのか。護衛はなにやってるんだよ。


「なぁ」

 

「どうかいたしましたか?」


「フリューゲルスル家は仮にも貴族だろ。何でそんな簡単に誘拐されたんだよ?」


「珍しくゆうと同じ考えね、、、ちょっとがっかり」


 ミアが溜息を吐きながら言いやがった。最後の一言は余計だぞ。

 俺達は質問に御者は神妙な顔つきで、目の前に人差し指を立てた。


「その場には護衛兵や近衛兵もいらっしゃいました。彼らは一瞬も目を離さなっかたです。そう、“一瞬も”です。しかし、誘拐されました。理由は至極単純です。」




 ─────全員一瞬で斬殺されたからです。



 御者が淡々と言う。

 だんだんと空気が凍る。締め付けられるような感覚が全身を巡る。だが、御者は更に口を開く。


「死体は皆、鋭利な刃物で首を切られておりました。断面から見るにかなりの達人だと思われます。」


「ちょっと待って!そんな危険な任務を何で私達に課せられたのっ!?」


「他のデスファングの団員にこの任務を遂行するよう言ったところ皆、原因不明の腹痛を訴えだしあなた方を推薦したからです。」


「アイツら覚えてなさいよッ!」


 思いっ切り台パンした。痛そう。にしても久々にミアがキレてるな。

 あの目は絶対任務が終わったら団員達とついでにボスをぶっ飛ばす目だ。だが、興奮した状態では任務に集中出来ない。ミアのバディである俺は落ち着かせるようにこう呟いた。


「ふっ、、、ミア」


 ───俺がいるだろ?


 ミアに諭すような口調で優しく、キメ顔をしながら言った。


 ミアは瞬間、鳩が豆鉄砲をくらったような顔になる。でも次第に太陽のような優しい笑顔になり、元気一杯の笑顔で。


「ふふそうね、確かに忘れていたわ」


 瞬間、目が吸い込まれる。まるで天女のような、でも何処か小悪魔のような口調でミアは言った。

 うぅ…目から汗がァ!!とあからさまに感動している優を置いて、ミアは小声で御者に。


「この任務を断りたいのだけれど」



 ────




「どうしてこうなったのよ!」


 ミアはそう言って、地団駄を踏んだ。

 さっきまでの笑顔なんて無く、その顔は怒りに染まっている。


「しょーがないだろ。この方法が一番なんだから」


 俺は今、女装している。ミアに関しては白いワンピースに麦わら帽子で、周りの通行人はジロジロ見ているというか、ガン見している。

 ミアの容姿は美しい。10人通れば8人は振り返るレベルだったが、今はお化粧もしていつもとは違う女らしい服装をしている。現実離れしたこの美貌は男達には魅力的過ぎて、頭がぐらつくレベルだ。


 今だったら10人通れば10人は振り返るだろう。


「で、でもっ!この格好わぁ、、、」


 羞恥心からか、ミアは顔の隅々まで赤く染め手で顔を覆っている。160後半で長身なはずなのに恥ずかしさの余り縮こまっているせいか小動物のような愛くるしい感情を彷彿とさせる。


 何故こんな事になっているかというと、御者に「今回の犯人は美しい女をばかり襲っております。」と言ってたから二人で可愛くなって商店街でハニートラップを仕掛けようという事になった。


「でもさ~変じゃないし、可愛いよ」


「あんたは見てられないけどね」


「ふっ、何処が変だと言うんだ?」


「まず、すね毛剃りなさい。ミニスカでそんな大根みたいなの見てられないわ。あとケバい」


 自分的には今流行りの黒ギャル風の化粧をしてみたけれど思った以上に不評らしい。割とへこむ。


 あとケバいってなんだよケバいって。


 だが、そんなこと関係なしにミアは愚痴を続ける。


「大体なぜこんな服あるのよ!しかもサイズもピッタリだし!!」


「俺がこんな事もあろうかとバックに詰めといた」


「そこまで準備が良いとキモい」


 何故ミアはゴキブリを見る目で俺を見るのだろう。流石に理解出来ない。最強のハンターとして大量の物を常備しておくのは基本だろ?

 そうこうミアが愚痴を溢していると声をかけられた。


「ねぇねぇ~其処の可愛い方の女子!俺と遊ばない?」


 見るからにチャラ男な奴だ。中肉中背で首からアクセサリーをぶら下げている。

 此奴が今回のターゲットかと疑って見るがただのナンパじゃないかと思いミアの耳に近づいて話しかける。


(なんか俺の事ナンパしてきてるけど、此奴がターゲットか?)


(あんた眼科行きなさいよ。間違い無く私にナンパしてるから。)


 そう言いながらジト目で睨まれた。


(まぁ兎に角ちょっくら話してみよ)


(はぁ、、、ちょっと探る程度ね)


(任せろ)


 そうこうしてる内に話は片付いた。まずはこのナンパ男に俺が先手を打つ。


「あら貴方良い男ねぇ、私久々に滾っちゃった。所で今夜二人っきりでぇ、○○○しましょう❤」(裏声)


 瞬間、男が青ざめ、もう彼の顔には生気が無い。まるで死刑囚が死刑執行が言い渡されたような悍まし顔になってしまった。


「ケツの処女を奪わないでぇ!!!」


 男は走り去ってしまった。赤子がお母さんの母乳を強請るような姿で成人男性が走っている。

 二人で暫く茫然としているとミアが盛大な溜息をしながら呟く。


「ゆうはもう喋らないで」


「いやいや、あれは俺の演技がうますぎて───」


「絶対違う。さっきの男、逃げる時泣いてたのよ」


「、、、」


 戦略外通告をされた。



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最強のアサシンになりたくて! 四方川 かなめ @2260bass

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