第8話最強のアサシンになりたくて!

バゴッ!バン!ボコ!ボンッッ!!


「くっ…っっ!こんなにも拳と拳の打ち合いが楽しいとは!!俺は感動したぞ!もっと!もっとだ!!もっとお前の本気を見せろぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「ゆうや!あなたが今戦ってるのはただのサンドバックよ!目を覚ましてゆうや!」


俺は今、ミアと模擬戦してボコボコにされ、不貞腐れて、サンドバックに喧嘩売ってる所だった。


「クソッ!やるじゃねぇか!この俺の拳に傷をつけるとは…!ふっ…相手に取って不足なし!!!!」

(砂痛った!砂詰まってるだけでもこんなに痛いのかよ!)


そう言って俺は、ウォォォォォ!と叫びながら、ギリギリ痛くない程度の力でサンドバックを叩く。


「ちょっと!大丈夫?!血が出てるじゃない!」


やはり砂の中に石が入っていたらしく、右手の背から、笑えてくる程大量の血が出る。


ドバドバ……。


「もう!何やってるのよ、あなたはサンドバック相手にも弱いのね……」


そう言って呆れたようにーーと、血が出ている右手に、包帯を巻いてくれるミア。

優しい。



「ふっ…たまたま愚者の中に強者が混ざっていたらしい………俺の鉄血に穢れを残すとは…やるな…」

(たまたま砂の中に石が混ざってたんだよ!決して負けた訳じゃないからな!)


いつものように厨二発言をしていると、「ハイハイ」とミアは適当にあしらって。

「さぁ、いつまでも不貞腐れてないで特訓するわよ」

そう、気を取り直したように言った。

そんなやる気満々のミアに、俺は。


「おうおう!やってやろうじゃねぇか!ボコボコにしてやるよ!!!!」


もちろんミアではなく、サンドバックを睨みつけて言う。



「はぁ…貴方ねぇ…」


そこでミアは、なにかいい手を思いついたらしく。


「ふっ…お主の力はもうサンドバック相手には荷が軽すぎであろう…?どうだ、ここは私と手合わせをするというのは…」


俺に似た、The厨二発言をして、俺を勧誘してくるミア。


「…」


そして俺は、少しの沈黙を待って。


「ふっ…口調を変えればいいと言うわけではあるまいよ…お主の厨二語はまだまだだ」

(少し揺れた事は黙っておこう)


と、言った。


俺の言葉を聞いたミアは、「ムムムム…」と、可愛らしい顔を膨らませ、あからさまに不機嫌になる。

そんなミアに、俺が、


「ふっ…君見たいな処女には俺を勧誘するほどの力は無いさ…」


と、言うと。


「ま、まぁ別にやらないとは言っていな…や、止めろッ!無言で首を絞めてくるのは止めろッッ!」


俺は無言で首を絞めてくるミアをなだめながらーー時刻はランチ時となった。




ーー俺は今、修行にひとまず一区切り付けて、ミアと二人で、デスファングの地下食堂に来ていた。


1年かけて築いた俺の人脈、とくと思い知るがいい!!


「いつものお願いします」


「いつものって??」


「…」

「…」

ミアが俺の横顔をジト目で睨む。


「…パチパチ肉で……」

「はいよーー!パチパチ肉一丁!!」


と、俺とミアの沈黙を打ち消すように、俺の小声の注文を受けた受付の女の人が、元気に言った。


ー俺とミアは今、2人してそれぞれの料理が乗ったトレーをもって、適当な席に座っていた。

ミアが、俺に向かい合う様に座る。

俺の目の前には、テーブルに置かれているキャンドルに淡くてらされている、パチパチ肉があるだけだった。

モザイク処理が必要な見た目をしているが、食べてみると意外と美味しいーーまぁ、ミアに睨まれていなければの話なのだが。

そう、先程の俺の最高に恥ずかしい事に対して、ミアがずっと俺を見ているのだ。


こんなに見つめられちゃ通る飯も通らん。


と、そんな事を考えていると、ミアが先にこの沈黙を破った。


「いつもあんな事言ってるの?」


ミアが、不思議なように、ただ疑問に思ったように。


「ふっ……………………………………。」


そんなミアに俺は、言うべき言葉がみつからず。


「そうです…」


と、俯き気味に正直に答えた。

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