第7話最強のアサシンになりたくて!

俺とミアは今「ボスの間に来てね♥」とボス言われて、ボスの間に向けて、暗い廊下を進行中であった。


「ふっ…ボスが直々に俺を呼ぶとは…余程凄い任務なのであろうな」

(また暗殺かな?暗殺だよな…?嫌だな〜やりたくないな〜)


俺が、発言とは全く逆の事を考えていると。


「ゆうや!そこにゴミ箱あるから気をつけーーあっ!」


バーーーン



「ふっ…俺とした事が…みすみす敵の狡猾な罠にハマってしまうとは…。まぁこれはわざとさ…本当はゴミ箱の位置ぐらい頭にインプットされているからな…ふっ…この俺を騙せるとでも思ったか…!残念だったな儚きダストボックス(ゴミ箱)よ…我を出し抜くのは100年早いわ…!ワハハハ……」



俺はゴミ箱に上半身を突っ込んだまま言った。



ーー「よく来たな…誇り高き我が子よ…」


ボスが、もはや恒例となった決まり文句を言ってくる。


「なぁミア、ボスってあれ言わないとダメな決まりがあるのか?」


俺が疑問に思い、聞くと。


「そんな物無いわよ、ボスがただ単にカッコつけのために5年続けてるだけよ…あんなの誰もかっこいいとは思ってないのに…」



こちらも恒例となった、部下達のボスイジり。

いや、これはもう新手のいじめだろう。


俺はそう思いながらも、もう慣れっこなのか、俺達のコソコソ話を無視してボスの続ける言葉に、耳を立てた。


「お前達に、最初の任務を与える…」


ほうほう。

俺達の記念すべき最初の任務だな。



ー俺は、ワクワク半分、不安半分で、ボスの話を聞いた。


その際、ミアは的確に任務に必要な質問や情報をボスから聞き出して居たのを見ると、なんだかミアとバディになれて誇らしい気持ちになった。





ーー俺は今、デスファングの、アサシン訓練所に来ていた。

そこは、暗視スキルを持っていない新人でも訓練が出来るように、アジト内では珍しくロウソクが置かれ、それが煌々と、淡いオレンジの光を放っていた。




ちなみに初任務の内容は、セクハラ容疑でブタ箱にぶち込まれているクソ貴族の暗殺だとか。


なんでもそのクソ貴族は、税金をたぶらかし、メイドと毎日ズッコンバッコンしてばかりで、まともに公務もしないのだとか…。が、そんな事じゃ暗殺の対象にはならない。


暗殺の依頼が来た本当の理由は、そのクソ貴族が、なんとこの国の王様の嫁と契っちゃったらしく、それの尻拭いという訳だ。


なんてクソ見たいな理由なんだ…とつくづく思うが、俺はミアと一緒に任務につける事が嬉しいので、そんなちっこい事は気にしない。



「なぁミア、ここで何をするんだ?」


「何言ってるのよ、訓練所に来たんだから訓練に決まってるでしょ?」



俺の素朴な質問に、ミアは立てかけてあるロングソードを右手で取り、ファルファルと回転させながら言った。


訓練…とな?

俺が?最強のアサシンである俺が…くくくく

訓練…?!


俺は軽く動揺しながら。



「ふっ…俺に訓練なんて……………………」




…。





そこで俺は、ちょっと考えた。


あれ?俺ってこっちの世界に連れてこられてからなんもアサシンっぽい事してなくね?


と。


そう考えた俺は。

「ふっ…たまには訓練も良いかもな……」

と言って、手の平を見事に返し、ミアと同じく、聖なる右手(右手)にロングソードを握った。


そして、ミアと同じようにファルファルと回す。


カランカラン…


「おっと…この剣では俺の屈強な魔力に耐えきれなかったらしい…ふっ…」

(恥ずかしっっ!)


「…」


カッコつけてミアの真似をし、案の定失敗する俺を、ミアはまるで保健所の犬を見るような目で見てくる。



「ふっ…今のは失敗では無い…剣の感触を確かめただけだ…」


必死に言い訳する俺に、ミアは何かを言いかける。


「…てぶーー」


が。


ミアが言葉を発する前に、俺は自分の言葉を重ねる。


「分かってる…!ただ単に手が滑ったんだろ?って言いたいんだろ?あぁそうだよ…カッコ悪くて悪かったな…」


俺がしゅんとして言うと、またもや何かを言いかけるミアの、先手を打って。


「いやーー」


「分かってるこうも言いたいんだろ?私の真似してカッコつけたのにできなくて恥ずかしがってるんだろ?って…ふっ…確かにそうだよ…でもな、男なら誰しも棒を回したくなるものなんだよ」


「だからーー」


「分かってるこうも言いたいんだろ?初めて持った武器が意外と重くてびっくりして落としたんだろ?って。そうだよ、結構重くてびっくりしたよでもな!男は誰しも、女にカッコつけたいんだよ!」


俺が、なんというか、自分の非力さに、自分で絶望していると。


「あの…私はゆうやに手袋を渡そうと思っただけなのだけれどね…まぁ…うん。そうね、初めてならみんなそういう物よ、うん。しょうがないよ、うんしょうがない!」


そう言ってミアは、俺の肩をポンポンと叩いた。



「あぁ…これが真の絶望というものか…」


俺はこの時初めて、本物の絶望を味わった。

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