第6話最強のアサシンになりたくて!
「な、なんで…なんで私が…こんな変態野郎とバディに…」
ミアは体育座りをしながら、部屋の隅に向けて、何やらブツブツ言っている。
俺は今、「新しいバディと親交を深めてこい」
とボスに言われ、新しいバディであるミアと共に、俺の部屋に来ていた。
ちなみに俺の部屋には、あの後ボスから許可を貰い、まるで高級レストラン並にロウソクが並べられていた。
光の元で、初めてミアの顔を見たが、ミアはすごく美人だった。
オレンジ色の部屋に俺とミア2人きりとなると、なんだかエッチな事しようとしてるみたいだが、俺にそんな勇気は無いので、安心して欲しい。
ミアはなおも、部屋の隅に向かって、何やら小声で呟いている。
「ふっ…こういう時は主役が後ろから抱きつき慰めるものと、古くからの聖書(ラノベ)で決まっている…!」
俺はそう思うと、後ろから見るとまるでゲロ吐いている人にしか見えないミアの背中に抱きついた。
そして、こう言った。
「俺じゃダメか…?」
「ダメに決まってんだろうが…!!」
即答するミアに俺は、
「ふっ…そんなに怒るとシワが増えるぞ…」
と言って、
ふぅぅぅぅ〜
と、ミアの耳に息を吹きかけた。
するとミアは一瞬
ブルルルル…!
と身震いして…
ヒュンッ!
「ぐふぉっ!」
目にも止まらぬ速さで、俺の顔をぶん殴って来た。
「あ、痛い!すんごい痛い!血が…血が出そうだわ…!」(※出てはいない)
俺がおねぇキャラでうろたえていると。
「私決めたわ!やっぱり貴方とはバディは組まない!」
そう言って、突然ズバッと立ち上がり、俺の瞳を真っ直ぐ見つめるミア。
「なんだ…求婚か…?」
俺はそんな事を思いながらも、言う勇気は無く。
「ふっ…素直じゃないなぁ子猫ちゃんは…ボスの言いつけを破るのか…?」
「いいえ!表向きはバディとして振る舞うわ!でも任務には単独で挑む!小型犬も殺せない貴方となんて任務はできないわ。あと子猫ちゃんはやめなさい!」
小型犬すら暗殺できない噂の人が目の前にいるにも関わらず、ぬけぬけとそんな事を言うミア。
「ふっ…別に俺はそれでもいいぜ…!その方がポイントも稼げそうだしな…」
俺はそう言って、ロウソクの穏やかなオレンジ色の中でポージングする。
ちなみにポイントというのは、それぞれのバディの武功に応じて付けられる物で、目標のみを誰にもバレず暗殺出来た場合、10ポイント。(満点)
もし、目標以外の人間も殺してしまった場合や、見つかってしまった場合は、5ポイント。つまり満点の10ポイントより-5ポイントという事になる。
あと目標を殺せなかった場合は、ゼロポイントとなる。
そしてそのポイントが高いバディ程、本部から貰える報酬が増えるという訳だ。
「…貴方にポイントが取れるとでも思っているの…?これまで任務を成功させた事なんて1度も無いのに」
言いながらミアは、クスッと笑う。
「ふっ…俺を見くびるなよ…?神から与えられしこの力…!今こそ解き放ってやろう…!!」
「な、なに?!」
と、ミアが中二病丸出しで俺の宣言にうろたえていると俺は、
「奥義!」
と言って…!
ズバッと腰を折り、グアァァァと言って膝を地に付ける。
そして聖なる両手(両手)を目一杯開花させ、それもバンバン!と地に付ける。
そして…!
「奥義!土下座ーー!!」
と言った。
「…は?」
どんな凄い技が出るのかと身構えていたミアは、突然ちっちゃくなった俺に、驚くようにそう言った。
そんなミアに俺は、スキル即読み(早口言葉)を発動させ…!
「お願いしますお願いします、見捨てないでください何でもします、なんなら靴でもなんでも舐めますのでよろしくお願い致します捨てないでください!」
見るも無惨にそう言った。
そんな俺に、ミアはふぅーと状況を整理するように息を吐いてから。
「お前はなにを言ってんだボケが!お前それでも男か?!」
「男です!じゃないとミアのロッカーにおしっこなんて出来ません!」
「ぶっ殺すぞっ!」
ー俺とミアは、ひとしきり言い合ってから。
『はぁ…』
と言って、疲れた様に地面に座り込んだ。
「全く…貴方といると本当に飽きないわね」
「ありがとうございます!」
「褒めてないから」
ミアが疲れたように俺にツッコム。
ーーここ1年、俺は自分で言うのもなんだが、結構頑張って来たと思う。
ただちょっと目標を目の前にすると手が震え出し、暗殺できないだけで、それ以外の事は結構上手いのだ。
俺は理解して欲しいと。
ミアならきっとーー。数あるロッカーの中でも、俺の身体はミアのロッカーを選んだのだ。
せめてミアの迷惑にはなりたくない。
そして…願わくば役に……。
俺はそんな願いを、(疲れている今なら行けるんじゃね?)的な考えで、ミアに言ってみる。
「ミア…俺は多分生き物を殺せないんだ…」
「え?」
「うまく目標の頭上に言ってもさ、ナイフを持つと…手が震えだすんだ」
「…」
「なんでなのかなーー?って思って、前病院に行ったら、「歳をとると現れるものです」って言う返答が返って来るばかりで…」
「…」
ミアは何故か、プルプルと体を震えさせ、顔を俺から背けている。
「ふっ…恐らく目標にトドメを刺せない俺に同情しているのであろう…」
(え、泣いてんの?マジ?これ行けるんじゃね?)
俺は畳み掛ける様に。
「はぁ…なんで俺ってこんな役立たずなのかな…」
と言った。
するとミアは、プルプル体を震わせたまま、体をこちらに向けると…!
「あはははは!」
笑い泣きしていた。
「お前…あっははっはっ武器を持つと手が震えるとかあっはっはっカッスーーカッスーー」
そう言ってミアは、「あーお腹痛いお腹痛い」と言いながら笑いこける。
俺もう泣いて良いかな…?
思ったより性格の悪いミアに、そんな事を思っていると。
「でもさ…予想外だったわ」
ひとしきり笑いコケたミアは、疲れたように。なんだがちょっぴり嬉しい様に。
「え?」
「いやだって、まさか貴方がそんなに優しいとは思っていなかったから」
そう、ミアは目尻に溜まった涙を拭いながら言った。
「…? ふっ…まぁ俺くらいの男となれば敵に情けも当たり前よな」
(いや、ただただビビってるだけなんだが)
俺はそんなミアの発言を、軽く否定しながら言うと。
「ふふっふふふっ」
と、笑い出すミア。
そんなにビビりの俺が面白いですか、そうですかそうですか、じゃあ俺泣きますね。
俺がそんな事を思っていると。
「はぁー分かったわ!」
と言って、またもやズバッと立ち上がり。
「確認だけど貴方、暗殺以外に必要なアサシンの技術はカンペキなのよね?」
と、おかしな事を聞いてきた。
「ふっ…俺を誰だか忘れたのか…?俺は最強のアサシンだぞ?」
暗殺できないアサシンはアサシンとは言わないと思うのだが。
俺の回答を聞いたミアは、気のせいか、
「ふっ」と笑って。
「分かったわ!貴方のバディになってあげる!」
と言った。
「ほぅ…お主には俺の価値が分かるのか…?」
「まぁな、女子のロッカーにおしっこかけられる人材は有用だ」
ミアは、俺に似せたような口調でそう言った。
『ふっははは』
俺達はお互いに、顔を見合せながら笑い合う。
「ふっ…ようやく俺の実力を理解した者が現れた様だ…………。…よ、良ければミアには、お前では無くゆゆゆゆゆゆうやと呼んで欲しいんだけど…」
俺が挙動をおかしくして言うと。
「分かったわ」
と、割と淡白な返事が返ってきた。
ふっ…このまま行けばラブコメ展開行きだな。
俺は人生勝ち組だ。
俺はそんな事を思いながら、「んんんん」と背伸びをするミアに、極小の声量で
「ありがと」
と言った。
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