終章
8-1 物語の終わり
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星の記憶とは俗にいうアカシックレコードのようなものなのでしょう。異なる位相、異なる座標系に位置するルナだからこそ、我々が生きる宇宙
けれど、『星の記憶』とはその名のとおり記憶に過ぎません。定められた運命もまた過去の記憶をもとにした演算処理によって導かれた推測に過ぎないのです。
エネルギー
彼にはそれしか
けれど、今の彼は一つの生命体であることを自覚しました。絶対のものなどないということを知っています。彼もまた、思考の旅を続ける一つの命なのです。アカシックレコードも、エネルギー
とても幻想的な世界、ルナ。その国の監視者、キウン。彼が星になれたように、僕たちもまた輝ける恒星になれるのです。恒星が他の星に比べ優れている、と言っているわけではありません。これは相対的ではなく絶対的な評価なのです。
考えることをやめてはなりません。だからと言って、考える
思考の旅路は僕たちを眩しい光へと導いてくれます。それはきっと、先駆者たちが輝いている証拠なのでしょう。先駆者たちが星になったように僕たちも輝ける星となり、未来を、命を、
四六時中考えろ、と言っているわけではありません。ただ、考えることが苦しいばかりではないと思ってもらいたいのです。思考の旅路、その先には苦労した以上に素晴らしい未来が広がっています。
抽象的で申し訳ありません。考え方を変えましょうか。考えるという天より与えられた権利を放棄するのは、勿体ないと思いませんか? せっかく頂いたなら有効活用したほうが生活が豊かになると思いませんか?
俗っぽかったですかね。ああ、笑っていただけたようで幸いです。
これから先、頭を使う機会が多々あると思いますけれど、それが何のために必要なことなのか、はじめに考えていただければと思います。例えば、僕は幸せになるために日々考えることを続けています。
いつか皆さんが手にした考え方を是非聞かせてください。きっとそれが答え合わせとなり、同時に経過報告になるでしょう。
皆さんが星になるように祈っています。
ご清聴ありがとうございました。
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「おじさん、はなしながーい」
第一声がそれだった。話を終えた僕の眼前では、
「お話はどうでしたか?」
「よくわかんなかったー」
先ほどと同じ少女に即答された。子供たちの後ろに座る親御さんは苦笑を浮かべている。純粋過ぎる愛娘に対するものか、あるいは夢物語を語り続けた僕に対するものか。
余程興味がなかったのだろう。始まって一分も経たないうちに子供たちは飽き性を発動させ、周囲をぐるぐると見回したり、隣の子と話し始めたりしていた。はじめこそ親御さんが注意していたものの、その親御さんも途中から舟を漕いでいたため、終盤は小学校の休み時間さながらに混沌と化していた。
話をかなり省略し、十五分程度に収めたのだけれど、子供にとっての十五分は大人の一日にも勝る長さだったのだろう。僕の話が終わったとわかると、眼前の子供たちは
ありがとうございました、と親御さんが口にすると、子供たちも遅れて同じ言葉を繰り返した。話に微塵も興味がなかったとしても、こうして感謝されると途端に良いことをしたと錯覚させられる。視界の端で同僚が呆れ顔を浮かべてさえいなければ、上機嫌で続章を話し始めていたことだろう。
「まるで
気怠そうに手を叩きながら同僚が歩み寄ってくる。皮肉だろうと思ったけれど、今の僕は気分が良い。
「ん? 敏腕だって? 褒めるなよ~」
「図に乗るなよ」
それは言い過ぎじゃない?
同僚は僕へ向かって缶コーヒーを投げて寄越した。ホットコーヒーの
どういう意図があるのだろう。同僚はニタニタと笑っている。ははーん、わかったぞ。
「さては……惚れ――」
「てねえから。間違えちまったからやるってこと。オーケー?」
素直にくれればいいのに、照れ屋だからわざと間違えたのだろう。僕は「ありがとう」と素直に礼を告げる。すると、同僚が「どういたし」と決まり文句を口にする。『まして』は
缶コーヒーを握り締め、僕たちは裏手に引っ込んだ。子供用の科学館。そのエネルギー展示場の隅に設けられた小さなスペースは、現在休憩の
『キミが星になるように』
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