3-4 お互いのジャスティス
7
「やあやあ、キミは少女趣味なのかい?」
僕たちと再会するなり、アルテミスはそう言い放った。無論、グレンへ向けた言葉だ。彼の身体にはヴェルがしがみついている。身長差が大きく、彼女の背丈はグレンの腰にも届いていない。
水晶地帯を抜け、
この世界に時間という概念はないけれど、皆が動くタイミングは似通っている。広大な空間で知り合いが出会う可能性は低くないけれど、世界の中心たる王城から離れるに従って確率は低くなってゆく。そう考えると、グレンが僕やアルテミスたちと遭遇したのは偶然ではないように思える。
青々とした芝へと一歩踏み出し、グレンが冷静に言う。
「また人間の真似事か。ただ身体が小せェ惑星ってだけだろう」
グレンたちの一歩後ろからヴェルの背中を見つめる。小惑星はその名のとおり惑星に比べ大きさが小さい。この世界の小惑星は皆
そう考えるとヴェルは
「そいつも真似事か?」
グレンがアルテミスの背後に目を向ける。そこにはロープで全身をグルグル巻きに拘束された少年少女の姿があった。先ほど逆さ吊りにされていた星々らだ。皆、一本のロープで
さすがにやり過ぎだと思う。逆さ吊りの時点で思っていたけれど、これでは市中引き回しではないか。いや、そのイメージも間違いなのだけれど。これではただの拷問だ。
「ギルティ……それだけのことさ」
よくわからなかった。グレンも同意のようで、眉根を寄せてアルテミスを
「多による個への嫌がらせは無くせない。いや、『嫌がらせ』なんて
グレンはアルテミスの話に口を挟まなかった。異を唱えるつもりはないということだろうか。視線はそのままで、隣のヴェルを手で気遣っている。
「標的になるかどうかは運次第。『頑張れば無くせる』とか『自分は無くせたから努力が足りない』とか言っているのは、運が良かったことに気がついていないだけなのさ。星の巡りが良かったことに気がついてない」
アルテミスは背後の少年少女らを
何が彼女をそうさせるのだろうか。加害者を
「
「オレたちに知性はない。魂の“在り方”に従って、他者と関わりをもっているだけだ。殺し殺されも
「この世界を偽物だと言いたいのかい? 滑稽だな。キミも含まれているというのに」
「違うな。この世界は作り物だが偽物じゃねェ。はじめから仕組まれているからこそ、抗い続けたいのさ」
「そうやって自分ならできると考えることこそ傲慢なんだよ。キミはそうやって偽善者面をする。被害者の――その子の支えになりたいと考えているようだけれど、その独善的
死を
けれど、グレンはそこに抗おうとしている。強者の理論だ。弱者にはわからない。
「だから、そいつらを殺そうとしているって? なら、次はオマエが同じ目に遭うつもりか?」
「パニッシュメント……殺しはしない。原因をエリミネートするだけさ」
普通に言ってほしい。
「オマエのジャスティスはわかった」
口調が移ってしまったようだ。
グレンはヴェルに離れるよう
一方、アルテミスはロープの先端を輪っか状にすると、空いた手に水晶製の
僕は呆気にとられた。彼女が
今まさに星同士の闘いが始まろうとしている。僕は
グレンが口を開く。
「加害者を
「被害者を
それが闘いの引き金となった。
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