第169話 称徳天皇を象徴する桜 次回最終話

強いてそれを試みるとすれば、同じような森を通り抜けた人の体験を見聞によっておぎないながら、その森の全貌を観念の画面に描き出してみるほかはない。ある種の主観的、観念性を脱することは難しい。まだそのほとぼりのさめていない最近の出来事、しかも複雑な国家規模の巨大な出来事を叙述する場合、特に顕著である。

しかし、過去の同じような出来事と照らし合わせ、物事を考えると、意外な真実が見えることがある。なぜなら、同じ場所に住んでいる人は同じような自然や環境があり、代々の先祖からの伝統やしきたりで価値観や感性を受け継いでいるからだ。

奈良時代の日本を学ぶことは、今の日本をみる上で重要というのはそれなりの理由がある。国際的で進歩のあった昭和から、内向きで閉鎖的な平成への変化が今の日本の現状である。そしてそれ以降は、奈良時代から平安時代に変わった時が原点なのだ。

しかしこの変化は、昔だから許されることで今では絶対通用しない。当時の変化のプロセスと理由が分かれば、これから日本はどうすればいいか考える参考になる。それを学習して、日本の地盤沈下を阻止することが求められるのだ。それを成すには大きな意識改革と覚悟が必要だ。

前にも日本は、明治維新と終戦の二度大きな革新を行っている。特に太平洋戦争が終わり、その反省から日本は称徳天皇を見直した。称徳天皇を象徴する桜が日本各地にさかんに植えられ、一万円、五千円の高額紙幣には称徳が重視した聖徳太子が印刷された。戦後の高度経済成長は、称徳の改革政策を引き継い旧態依然の体制は日本を硬直させ、世界でも異質な天皇制を固守し続けている。

それは、天皇家を守るのが目的でなく、その体制が都合のよい一部の既得権益者による社会である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る