第168話 日本の森 最終話まであと2話
日本の権力者は、この政策の秩序を守る、実績を重んじると日本人に教育で信じ込ませ、遺伝子レベルまで浸透させている。その結果、天皇家の伝統やしきたりだけでなく、古代から続く世襲氏族制など古い制度が維持され、成長が止められている。
そして、改革派の末路は悲惨である。ここまで頑張った天皇は、ほとんどいない。
しかし、日本は称徳天皇の改革を認めず彼女の評価は低いままである。しかもこの改革はスキャンダルに作り変えられ、称徳天皇の改革そのものを低俗なものにおとしめている。日本の発展や進歩の足を引っ張り、阻害する悪き慣習がこの時の教訓で形成されたのは皮肉としかいいようがない。
日本が、正常な状態になるためにはこの慣習を修正しなければならない。こう考えると、称徳天皇の暗殺は多くのことを意味していた。
私が称徳天皇をとりあげたのは、彼女の最期の顛末が今の日本の原点となったと思ったからだ。その意味で称徳天皇はその思想、性別、そして最期の至るまで日本の象徴といっていい。彼女以後、女性皇太子は令和になった今日までいないのはそれなりの訳がある。
この時期に日本は、大きな方針を決定したのである。世界の潮流や常識を無視し、古来より続く日本の慣習を踏襲し、固守することである。奈良時代の方針は今でも守られ、日本は沈みつつある。日本人は知ってか知らずか、その流れを了承している。
日本の将来を、日本人はどう考えているのか。
私たちは、まだその森の巨大な影のなかを歩いている。その森を、遠望しうるまでにはほど遠い。そういう時点で、その森の全貌を描き出そうというのは、もともと無理な話なのである。
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