第167話 日本の未来を考える 

後花園天皇である。しかもこの女性も、ただのおとなしい女帝でなかった。彼女は中継ぎの女帝であることを承知しており、女帝の職務をまっとうした。我が子がいない彼女は、後継者の親戚の皇太子を立派な天皇に育て、護国安定のための岩清水八幡への祈願の行幸や宮中の行事などを復活させた。

今まで機能不全と思われていた天皇が、国のために動いたことで国民の天皇への意識が変わっていく。その結果、天皇の権威は向上し、やがて来る激動の幕末で大きな役割を果たす土壌となった。

このように、女帝は時の権力者とって不都合なのである。女帝の政策を危険視するものの思惑によって今でも日本では女帝は許されず、女性皇太子も称徳天皇ただ1人である。

今の天皇の一人娘も優秀な女性であり、保守層から敬遠されている。しかも弟の皇太子は、改革派で娘の眞子さんも一般的な感覚の人であり、秋篠宮家も問題が多い。天皇家の現状維持は、現状暗雲がたち始めている。

一部一般人からは改革が望まれているが、それでも保守層の反発は必死で天皇の制度の思考は止められ、未来への設計は停滞している。 

称徳天皇の死は、日本の歴史に深刻な影響を与えた。父聖武天皇の政治改革から、多くのことを学んだ彼女は日本の将来のため世界の最新の思想と制度を取り入れ、現在でも通用する政治体制を日本で実践しようとした唯一の天皇だった。

本話の冒頭で、吉備真備と玄肪を取り上げたのは彼女の改革が二人の夢にそったものだったからである。

しかしその思想、その志し、そして彼らの末路や最後など、圧倒的多数の反対勢力に潰される過程が、日本の今に続く改革派を潰す方法としての伝統手段となってゆくのである。

この対策は有効に働き、日本では対抗策としての常套手段を作りあげた。

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