第166話 奈良時代は、女性社会?
竹取物語の本当の意味は、この謎にあると考えられる。
謎の原因の一つは、かぐや姫がしきたりや慣習を守らず安易に変えようとしたことだった。真備は、女帝に何度か忠告したことがある。物語でも、かぐや姫に帝が宮仕えを望みます。当時宮仕えをすることは大変名誉のある、晴れがましいことだった。
しかし、かぐや姫は断ります。実際真備の忠告は、女帝に尊重された。真備は、武則天の狭仁傑であった。武則天は狭仁傑の直諫を生涯信じ続け、可愛い孫や寵愛している侫臣を殺しても彼だけは殺さなかった。称徳も、真備がどんな苦言をいおうが失脚や遠ざけることをしなかった。
しかし、称徳は彼の苦言を理解しつつ完全に履行しなかった。彼は、もう少し辛坊強く女帝に履行していただくまで忠告すべきだったと悔やんでいた。物語でも、帝はかぐや姫を御所に連れて帰れるのを諦めます。
女帝と道鏡の飽浪宮の出来心も、彼はうすうす気づいていた。娘の由利の様子がおかしいのも、見て見ぬふりをしたのも彼の甘さだった。称徳を娘のように愛しい彼は、女帝の望みをかなえなせてあげたかったのだ。
彼は、この自分の甘さが女帝を死なせたと考えた。かぐや姫の罪の一部は、自分の罪でもあったのだ。真備は、死ぬまで悔やみ続けた。
しかし、何故かぐや姫はそれほど強かったのだろう。奈良時代は、女性の時代だった。奈良時代の八代の天皇のうち、四代が女帝であった。男帝としては聖武天皇や淳仁天皇らが存在したが、しかし聖武天皇には光明皇后、淳仁天皇には孝謙太上天皇という女性が厳然たる力を有していた。則ち、奈良時代七十五年の歴史のうち後期の光仁天皇十年と桓武天皇の長岡京遷都以前の四年以外は女性中心の時代だったことが分かる。
しかし、光仁天皇以降から現在までは男性中心の社会である。
それにしても一時代、半世紀以上も日本が女性中心の時代だったのは驚きである。しかも、千三百年以上も前の話である。
しかし女帝はそれ以後永らく即位せず、約千年たった江戸時代後期に久々に女性天皇が即位することになる。
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