第23話
攻撃目標は、王皇后にも向けられたのである。むしろ、そのほうが主目標であった。
武昭儀は、後宮の女たちの関心をかうことにつとめた。高宗の寵愛が厚く様々な下賜品があったが、武昭儀はそれを惜しげもなく宮女たちに与えたのである。
特に王皇后と蕭淑妃についている侍女たちに、気前よく金品を分け与えた。王皇后や蕭淑妃についての情報を武昭儀はその侍女たちから聞き、それを曲げて皇帝の耳にいれた。誇張されているかもしれないが、決して根も葉もない話ではない。
武昭儀は、すぐ底の割れるような下手な讒言はしなかったのである。はじめは首をかしげていた皇帝も、次第に武昭儀のいうことを信じるようになった。
しばらくして、高宗の寵愛を武昭儀にとられた蕭淑妃は王皇后に泣きついてきた。王皇后も皇帝に武昭儀を紹介した立場上、武昭儀をたしなめようとした。
しかし、武昭儀は一枚上手だった。
武昭儀としては、王皇后の管理下におかれるのは御免で王皇后から解放されようと入念に策をたて、罠に
貶めようと機会をうかがっていた。そのチャンスはやっときた。
その頃武昭儀は、三人目の子を産んでいた。初めての女の子だった。出産まもなく王皇后は、武昭儀の部屋にやってきた。王皇后は、大奥を仕切る立場であり皇帝の妃や子供の管理を任されていた。
皇帝の子供が産まれると、彼女は子供の男女の確認や手続、誕生のお祝いの御披露目会などの行事の日時の打ち合わせなどを仕切らなければならない。武昭儀は三人目なので、王皇后の訪問の時期や仕方を熟知していた。
武昭儀は、王皇后が訪問するのにわざと部屋を出て部屋に誰もいなくした。王皇后は罠とは知らず一人で部屋にはいった。王皇后は赤ん坊の性別の確認をし、
しばらく赤ん坊をあやして出ていった。
王皇后自身は子を生んでいないし、男児ならともかく女の子なのでただ可愛かったのである。まもなく皇帝が来ることを、武昭儀は知っていたのである。
彼女は皇后が出ていった後、自分の赤ん坊を絞め殺し布団をかぶせておいた。高宗がやって来ると、当然赤ん坊を見る。
「ほんとに可愛いのよ」
武昭儀は、いかにもうれしそうに笑いながら布団をめくり驚いたふりをした。
「あら、どうしたの? おかしいわ。うちの子おかしいわ」
赤ん坊を揺すって顔を近づけ、彼女は絶望的な声をあげた。
「死んでるわ、呼吸してないわ!」
「なにを申しか!」
高宗は、近づいて赤ん坊にふれた。もう冷たくなっていたのである。武昭儀は、その場に泣き崩れた。
「どうした。なにがあったのだ?」
高宗は、次の間にひかえている侍女たちに訊いた。
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