第13話

阿部内親王は、天皇の一人娘という皇族の女性の中では一番の貴種で聖武の子の中でも一番血統が良かった。その彼女が自分を支持しているということは、光明皇后にとって強力な後援となった。

阿部内親王は、光明皇后を認めることで自身の権威をも高める相乗効果をもたらした。聖武と光明皇后、そして阿部内親王の三人が揃えば誰にも文句を言わせないほどの権威が備わってきた。阿部内親王は、世界は広く多くの人々が違った価値観思想がある。

彼女は、女性が政治の主導権を握るということも抵抗なく受け入れることもできた。それだけでなく古い日本の体制を新しく変えるのにも賛成で、側で仕えている貴族女性の意見をも聞くようになっていた。

女性の政治への進出も増えてきた。

しかし光明皇后の改革は、貴族社会はそのまま温存したことで無理があった。貴族は、古来からの既得権益を僅かでも手放すことにも抵抗した。彼女の改革は既存の慣習やシステムとの軋轢を生み、それを修正しようとすればするほど歪みを生じていった。

光明皇后は持ち前の行動力で次々と前列のない政策を打ち出したが、結局貴族の共感は得られなかった。それでも彼女がこの政策を押し進めたのは、ひとえに自分が産んだ子供を天皇にしたいが為であった。

彼女は幼い頃より父不比等より、なに不自由なく我が儘放題に生きてきた彼女はそれに反対するものと妥協や我慢をするということができなかった。

彼女は自分の子供を天皇にするためには、どんな困難も厭わなかった。

彼女は自分に味方してくれる甥である藤原仲麻呂を、叙々に重用していくことになっていった。

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