第9話 内親王と光明皇后
光明子は藤原氏出身である。藤原氏は名門氏族の中では格下だが抜群の功績があり、彼女はそれを誇りとしていた。そしてそれを最大限に利用し自分の地位を高めようと必死だった。娘には名門氏族の博学な人物を東宮学士にしようと思っていたが、夫の聖武は地方氏族の吉備真備を東宮学士とした。
聖武は、唐に憧れ実際にこの目で唐を見てきた真備に
唐の政治や体制を娘に学んで欲しかったのだ。光明子は内親王が女の子ということもあり、夫の聖武の顔を立てしぶしぶ了解せざるをえなかった。
しかし、娘が広虫など身分の低いものと気軽に遊ぶのを見て苦々しく思っていた。彼女の心配をよそに、内親王はのびやかに成長した。
内親王は吉備真備より世界は広く多くの人種が住み、その中で多用な思想や考え方があり誰もがその中で生活している。自分が正しいと思っている考え方も他の地域では必ずしも正解ではない事もあると教えられた。
広虫も内親王づきの侍女であり、真備の授業を側で聞いていた。その為、広虫もその考えを理解していた。当時は阿部内親王は、女性でもあり天皇候補ではなかった。
しかし、中継などなんらかの事情で天皇になる可能性はあった。光明子はそれまで想定し、男並みの貴族の教育を今から始めていた。それに対して聖武は橘諸兄の意見で娘を将来ね日本を見据えて国際感覚豊かな女性に育てようと考えていた。そして、唐をこの目で見てきた吉備真備を東宮学士に抜擢した。
真備は天平九年の天然痘が大流行した時の対処が立派であったが、本来の貴族でないので公卿にはなれなかった。だがその才能は抜群なので、将来のために使おうと考えた人事だった。
光明子は、その立派な意見に反対できなかった。
しかし、侍女の広虫は訳が違った。広虫は、早々に娘から引き離すことは可能だった。
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